社会|2024年9月24日掲載

世界各国から430名あまりが参集し、別れを惜しむ

青嶋 仁先生 追悼講演会開催

青嶋 仁先生 追悼講演会開催

 さる9月22日(日)、ヒューリックホール東京(東京都)において、青嶋 仁先生 追悼講演会(発起人:志田和浩氏〔歯科技工士・PREF〕、小田中康裕氏〔歯科技工士・oral design彩雲〕、高橋 健氏〔歯科技工士・Smile Exchange〕、青嶋ゼミ同窓会)が開催され、世界各国から430名あまりが参集した。

 本講演会は、昨年7月に逝去(享年76)された歯科技工士の青嶋 仁氏(歯科技工士・ペルーラAOSHIMA、青嶋ゼミ代表)のこれまでの功績を振り返り、次世代に語り継ぐことを目的としたもの。演者には青嶋氏ゆかりの著名歯科技工士・歯科医師らが日本と米国から駆けつけ、「時代をともにした世代」「時代を継ぐ世代」「青嶋ゼミ修了生」「これからを牽引する世代」という4つの世代別講演に加え、青嶋氏の生前のハンズオン風景を収録した動画上映および1990年代から国境を超えて臨床をともにしてきたDr. Gerard Chiche(オーガスタ大、米国)による来日特別講演も行われるという盛りだくさんの内容となった。以下に演題と演者について示す(講演順)。

(1)「青嶋先生の功績と思い出の旅」坂 清子氏(歯科技工士・クラレノリタケデンタル顧問)
 本演題では、坂氏と青嶋氏の出会い、なかでも青嶋氏の代名詞ともいえる「インターナルステインテクニック」のためのステイン材を開発することになった経緯について述べられた。また、上述のDr. Chicheと青嶋氏との出会いや、その後の世界各国での講演活動についても多数の写真とともに示した。

(2)「青嶋先生を懐かしむ」片岡繁夫氏(歯科技工士・大阪セラミックトレーニングセンター)
 本演題で片岡氏は、自分にとって欠かすことのできない歯科技工士としてMr. Willi Geller(歯科技工士・oral design主宰、スイス)と山本 眞氏(故人:歯科技工士、M. YAMAMOTO CERAMIST’S INC.)、そして青嶋氏の3名を挙げたうえで、こうした世代の歯科技工士が「セラミスト」とよばれて歯科技工士の地位を向上させたとした。そのうえで、青嶋氏を「天然歯を作るという夢を追いかけ、インターナルステイン法を確立し、世界中のセラミストに天然歯を作ることの楽しさ・夢を与えてきた」と評し、現在の若い歯科技工士にも夢を追いかけてほしいと締めくくった。

(3)「相羽直樹先生、ルーク長谷川先生、遠藤淳吾先生 対談『青嶋 仁氏を語る。』」相羽直樹氏(歯科技工士・oral design Monterey)、ルーク長谷川氏(歯科技工士・Luke Hasegawa oraldesign LLC)、遠藤淳吾氏(歯科技工士・Jungo Endo Dental Studio oral design Hermosa Beach)
 本演題は、Willi Geller氏が主宰する「oral design」に所属し、米国在住で活躍する3人の歯科技工士をオンラインで結んだ鼎談を動画収録したもの。発起人のひとりである小田中氏の司会のもと、青嶋氏の「人柄・イメージ」「影響を受けた症例・論文」「自身の臨床に与えた影響」の3点につき、三者三様の答えが引き出された。

(4)「青嶋 仁先生を偲んで」吉田明彦氏(歯科技工士・Gnathos Dental Studio、米国)
 本演題では、吉田氏が「歯科技工」誌に掲載された青嶋氏の論文に衝撃を受けて1990年にハンズオンコースを受講したエピソードや、1991年の渡米後、インターナルステインテクニックに必要だったノリタケデンタルサプライ(現:クラレノリタケデンタル)の材料が入手できずに難儀した経験、および同材料の米国進出後のプロモーションに協力したエピソードなどが語られた。また青嶋氏とDr. Chicheの共著『Smile Design』(Quintessence Publishing、日本語版も小社刊)についてもふれ、青嶋氏の技術がわかりやすく伝わるとともに、チェアサイドとラボサイドがともに読むことで患者説明や意識共有に役立つとした。

(5)「私の歯科技工の30%は、青嶋 仁氏のエッセンスでできている。」小田中氏
 本演題では、青嶋氏が著書「Ceramics Example」(小社刊、絶版)で示したポーセレンのサンプルのすばらしさについて述べたうえで、自身が若き日に製作したサンプルを提示。青嶋氏に出会う前の状態、出会ってからの状態、そして上述のMr. Gellerに出会ってからの意識の変化などについて述べたうえで、Mr. Gellerが提唱する多色築盛の概念は尊重しつつも、青嶋氏のインターナルステインテクニックからもかなりの影響を受けてきたと述べた。

(6)「『伝わるインストラクター』を示してくれた青嶋 仁先生」山田和伸氏(歯科技工士・カスプデンタルサプライ/カナレテクニカルセンター)
 本演題では、青嶋氏とともにノリタケ社のインストラクターを長年にわたり務めてきた演者の立場からさまざまなエピソードを紹介。世界各国のインストラクターとの交流や、年賀状に添えられた青嶋氏の手によるイラストなどを示し、その人柄をしのばせた。また、インターナルステインテクニックの紹介パンフレットに用いられたテストピースを大量に製作した思い出や、青嶋氏の考え方を参考にしつつ、その後演者が考案した「コンプリメンタリーカラーテクニック」などについても述べ、「青嶋氏は、さまざまな気づきを与えてくれた人」と締めくくった。

(7)「青嶋先生から影響を受けたこと、そして次世代につなぐべきこと」西村好美氏(歯科技工士・デンタルクリエーションアート)
 本演題では、「技工道」を示してきた歯科技工士として、桑田正博氏(故人:歯科技工士、愛歯技工専門学校校長、ボストン大学歯学部〔米国〕客員教授)、上述の山本氏、そして青嶋氏を挙げ、それぞれ「フィロソフィーの先生」「科学の先生」「自然そのものを見本に独自の道を拓いた人」と評した。また、青嶋氏が製作してきた技工物・サンプルについて、演者はとくに表面性状について大きな影響を受けたとし、その実例を多数示した。

(8)「Internal Live stainとAll-on-4」志田氏
 本演題では、フルアーチのモノリシックジルコニア製ボーンアンカードブリッジを臨床で多く手掛ける演者が、いかにインターナルステインテクニックの恩恵を受けているかについて紹介。いわゆるセラミストではなくとも、「インターナルステインテクニックがなければ今、仕事にならない」と述べ、その有用性を動画とともに供覧した。

(9)「青嶋先生を偲んで ~紡いでいく想い~」小林恭之氏(歯科技工士・Felicita Dental Lab)
 本演題では、演者の歯科技工所「Felicita Dental Lab」の命名についてまず紹介。「Felicita」とはイタリア語で「幸福」という意味であり、青嶋氏が名付けたものであるとした。そのうえで、青嶋氏との思い出や教えを生かした症例について示した後、「われわれは青嶋先生が敷いてくれたレールの上に乗っているだけ」「先人たちの歴史を伝えていくことが大事である」と述べた。

(10)「青嶋ゼミで学んだ3年間、そこで得た物」高橋氏
 本演題ではまず、歯科技工士人生のすべてにわたってサンプルを製作し続けた青嶋氏の姿勢について敬意を示したうえで、演者がそのサンプルについて感じる部分について提示。「柔らかな色・グラデーション」「どの角度から見ても不自然な部分がない」「硬いポーセレンなのに、柔らかさを感じる」など、青嶋氏の製作するサンプルの独自性、優位性について考察した。また、演者自身が製作したサンプルについても提示し、技術研鑽のなかでは「人に聞いてみる」ことも非常に大切であるとした。そして、今でも技工作業時には青嶋氏が傍らにいるような気がしており、「青嶋先生がここにいたら、何を言われるか」を考えていると述べた。

(11)「青嶋先生が残してくれたエッセンスを症例へ」林 直樹氏(歯科技工士・Ultimate Styles Dental Lab、米国)
 本演題ではまず、演者自身けっして青嶋氏とのご縁は多くないとしたうえで、さまざまな講演や論文から間接的に影響を受けてきたことを提示。また、演者自身は2001年に渡米した一方で、青嶋氏は1990年代からDr. Chicheと郵便とファクシミリを駆使して日本にいながら米国の歯科技工作業を行っており、ある意味時代を先取りしていたことに敬意を示した。そして演者自身の症例についても提示し、インターナルステインテクニックの応用例を示すとともにクオリティの高いビジュアルで言語の壁を超え、世界に羽ばたくことの大切さについて示した。

(12)「青嶋 仁先生の妙技」湯浅直人氏(歯科技工士・大谷歯科クリニック)
 本演題では、演者が青嶋氏の言葉のなかから特に感銘を受けたという「歯科技工は芸術的ではあるが、芸術ではない」「天然から学べ」という言葉を示したうえで、青嶋氏を知った経緯や実際の出会いについてまず提示。上述の著書『Ceramics Example』との出会いから、コンテスト受賞や雑誌掲載などを経て、実際に青嶋氏のラボで本人と対面するまでのエピソードを示した。また、とかくインターナルステインが注目されがちな青嶋氏であるが、演者はそれに加えて青嶋氏の「形態の妙技」に注目。あえて術前の形態を残す、また乱排を活用するなど、左右対称に製作するだけではたどり着けない青嶋氏ならではの妙技にも注目してきたとした。

(13)「青嶋ゼミでのデモンストレーションの様子」
 本演題では、青嶋氏の生前のハンズオン風景を収録した動画が30分にわたり上映された。

(14)「青嶋氏を偲ぶ ―類まれなマスターとの特別な人生経験」Dr. Chiche
 本演題では、冒頭で述べたDr. Chicheが登壇。上述の著書「Ceramics Example」で青嶋氏の才能に驚いて1993年に来日したエピソードや、初めて両者で手掛けた下顎中切歯単冠症例の紹介、その他最長30年の予後をもつ症例が次々に示され、青嶋氏との長年にわたる深い関係をしのばせた。そのうえで、「ただ先生と呼ぶだけでは足りない。マスターの中のマスターと呼びたい」「青嶋氏はセラミックの世界を引き上げたが、歯科界はその伝説を失ってしまった」とし、青嶋氏に対する最大限のリスペクトを示した。

 なお、全日程終了後には「青嶋 仁先生 お別れの会」も別途行われ、こちらも200名ほどが参集。各企業や青嶋ゼミの関係者、そしてDr. Chicheによるスピーチなどが行われ、参加者らは旧交を温めるとともに青嶋氏への追悼の思いを強くしていた。

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