目次
第1章
歯科技工士のための歯周組織の基本知識
1.歯周組織の名称と役割
[ここが歯科技工との接点!]生物学的幅径を無視した修復物はNG
[ここが歯科技工との接点!]修復物周囲の歯周組織形態の維持に必要な歯肉線維と生物学的幅径
2.歯肉の性状(バイオタイプ)
thin-scalloped typeの歯肉
thick-flat typeの歯肉
[ここが歯科技工との接点!]薄い、厚い-歯肉のバイオタイプに応じた修復を
3.健康な歯肉と病的な歯肉
健康な歯肉と病的な歯肉の違い
浮腫性と線維性歯肉の違い
4.残存炎症と歯肉の色
実例から:
歯肉の赤みから残存している炎症を察知 プラークコントロールしやすい形態を心がけた
5.歯肉炎と歯周炎
歯周病における歯肉炎と歯周炎の違い
歯周組織は変化する
[ここが歯科技工との接点!]
歯周病の重篤度に応じて前歯部の歯冠修復物の配慮事項、設計を考えよう
第2章
歯周組織にやさしい歯冠修復物製作のための7つのルール
[Rule1]歯肉の性状を念頭において歯冠形態を付与する
その患者さんの歯肉はどのタイプか? ─美しい歯肉と修復物の関係を維持するために─
[Rule2]適切なエマージェンスプロファイルを与える
アンダーカントゥア、オーバーカントゥアを避ける
[Rule3]歯肉の厚みの違いによって、歯冠修復物の歯肉縁下形態を変える
歯肉の厚みによるカントゥアの与え方
このルールを技工に生かす:薄い歯肉への形態の与え方
厚い歯肉への形態の与え方
歯科医師も歯周組織に応じた治療方針を立てている
歯科技工士が歯肉の厚みを判断するための方法
[Rule4]歯冠修復物と唇面辺縁歯肉の形態はほぼ対称的に
ほぼ対称的(ガルウィング)にする
修復部位に応じてカントゥアの形態を変える
具体例から:
修復例(女性・32歳)(症例提供A)
[Rule5]歯肉縁下でマージン設定が深い場合の移行形態は、Sシェイプで
マージンの設定位置による移行形態の違い
具体例から:
ブリッジ修復(52歳)(症例提供A)
[Rule6]歯間乳頭の確保に必要なガイドラインを応用する
歯槽骨辺縁とコンタクトエリアとの関係
歯冠形態がtriangular formationの場合
歯周組織の性状や歯牙形態の大小も考慮に入れる
[Rule7]修復物装着後のプラークコントロールのしやすさを考慮する
プラークが停滞しにくい形態、性状の付与は歯科技工の必須事項
プラークが停滞しやすい箇所を知ろう
口腔内全体の不潔域に注意
可動粘膜にも注意する
具体例から:
の修復例から
の修復例から
無意味な表面性状を与えない
プラークが付着しにくい研磨が重要
このルールを技工に生かす:CAD/CAMなどで製作するチタン合金アバットメントの研磨(
修復例)
このルールを技工に生かす:マイクロスコープを用いた研磨法の実際
このルールを技工に生かす:金属面の研磨工程(セミプレシャス)
ポーセレン面の研磨工程
第3章
歯周組織への「力」の影響を防ぐ歯冠修復物
−咬合調整の少ないクラウンの製作−
1.咬合調整の少ない歯冠修復物をめざせ
点接触で微調整の歯冠修復物
2.模型と生体の誤差を最大限に補正する
間接法特有の生体の問題から生じる誤差に注目
作業模型の補正により咬頭嵌合位を口腔内のそれに近づける
筆者の実験から:間接法による上下作業模型が「高いクラウン」の原因
3.生体と模型の誤差を埋めるための前準備事項
印象や模型が変形していないかを厳しくチェックすることが重要
印象や模型の変形原因とチェック事項
自社の作業模型精度の把握も誤差を克服するために重要
4.咬合調整の少ないクラウンの製作マニュアル:基本編
[Phase1]模型に全体的・部分的な変形がないかをチェックする
1.模型の変形をチェック
2.シリコン印象の内面のチェック
3.模型面の変形をチェック
4.細かな面荒れには表面硬化材
5.咬合面の気泡を削除
6.水から守るトリーマー作業
7.一次石膏底面を仕上げる
[Phase2]口腔内の咬頭嵌合位に近づくための模型の補正法
1.ダウエルピンの植立
2.石膏分離材と二次石膏
3.咬合器のチェック
4.フェイスボウの使用
5.チェックバイトの観察(1)
6.チェックバイトの観察(2)
7.チェックバイトの観察(3)
8.チェックバイトの分割と模型の調整
9.下顎模型の付着
10.咬合接触点の回復準備:チェックバイトの穴空き箇所に青マークを入れる
11.咬合接触点の回復:赤マークを削除しつつ口腔内の咬合接触点を回復させる
12.模型調整後の咬合接触状態の確認
13.咬合面のファセットからガイドの方向をチェック
14.プロビジョナルレストレーションの製作
15.清掃性を配慮した形態にクラウンを調整
16.支台歯の形状に合わせた咬合接触点の付与
[Phase3]クラウン完成から口腔内へ装着
5.ここまで詰めよう!咬合調整の少ないクラウン:応用編
歯の支持能力に応じ過重負担を調整する
咬合接触部の高さの精度を上げる
具体例から:
オールセラミックブリッジを製作(症例提供A)
第4章
ラボワークにおける生体情報の活用法
1.作業模型からの情報の限界
作業模型のみでは十分な歯周組織の情報は得られない
作業模型には歯冠形態の回復に必要な情報も不足している
具体例から:元の形が推測しにくい例から(症例提供D)
2.チェアサイド画像のラボワークへの生かし方
チェアサイドからの画像情報はラボワークに必要不可欠な生体情報である
[活用画像1]初診時の画像
患者の現状と主訴を理解できる
咬合に関する項目を抽出できる
[活用画像2]顔貌の画像
審美的特性を把握できる
[活用画像3]フェイスボウ付着の画像
前歯部修復における歯軸設定、咬合器上での正中線、
咬合平面推測のための参考資料を活用できる
[活用画像4]支台歯形成および周辺の歯肉の画像
支台歯の色、歯肉の変色程度、歯肉の質や形態を把握できる
[活用画像5]プロビジョナルレストレーション
強度や清掃性に加え、チェアサイドの最終修復物に対する希望を把握できる
[活用画像6]ブラッシングの画像
患者固有のプラークコントロール情報を入手できる
[活用画像7]シェードテイキングの画像
残存歯の色を正確に把握できる
[活用画像8]修復物試適時の画像
修復物試適時には模型上では判断しづらい箇所の確認ができる
[活用画像9]修復物の口腔内装着
模型上と装着時の違いを知り、今後に生かそう
[活用画像10]エックス線の画像
歯根や骨の状態を知り、修復物へ反映させる
[活用画像11]歯周チャートの画像
歯周組織や残存歯の状態がわかる
具体例から:
修復(女性・55歳)(症例提供A)
第5章
各種画像データを有効利用できるデータベース作りのすすめ
1.検索しやすいデータベースとラボ環境を作る
データベースは修復物の質を生む
データベース構築と管理のポイント
スタッフのデジタルスキルを養おう
2.データベースの2次利用のすすめ
歯冠修復物の質をより向上させる経過観察からの学び
検証:生体情報の活用は本当に有効だったか?
症例(1) 20年間、この修復物と歯肉の状態が維持されている症例から(症例提供D)
経過観察から学んだ歯科技工士としての盲点
症例(2)
ブリッジ。時間の横軸と縦軸から反省する(症例提供D)
第6章
歯周組織にやさしい歯冠修復物症例集
[Case1]歯が離れている症例(歯冠修復)(症例提供A)
[Case2]歯が離れている症例(ラミネートべニア)(症例提供A)
[Case3-1]前歯歯肉ラインがほぼ揃っている症例(症例提供A)
[Case3-2]歯肉ラインが不揃いになった症例(前歯唇側は歯冠色のみ修復)(症例提供A)
[Case3-3]歯肉ラインが不揃いになるのを技工的に対応した症例
(歯頸部前装材に歯肉色を用いた症例)(症例提供C)
[Case4]歯周管理のために下部鼓形空隙を空けた症例(症例提供A)
[Case5-1]歯の位置が前後的に問題のある症例(症例提供B)
[Case5-2]歯の位置が前後的に問題のある症例
(歯の位置が唇側+空隙歯列の改善)(症例提供A)
[Case6]ポンティック部の粘膜に問題のある症例(症例提供B)
付録
ラボワークに役立つ
エックス線と歯周チャートの読み方
1.エックス線画像活用のための基礎知識
正常な歯周組織のエックス線画像を知ろう
エックス線画像に写る歯周組織の異常像を理解する
2.歯周チャートを活用するための基礎知識
プロービングは歯周病をみつけるためのもっとも重要な診査
歯周チャートの見方
〈症例提供歯科医師〉
症例提供A:東京都調布市 阿部 二郎先生
症例提供B:埼玉県川口市 亀田 行雄先生
症例提供C:神奈川県横浜市 山口 剛先生
症例提供D:神奈川県横浜市 湯田 宏先生
症例提供E:東京都調布市 小林 朗男先生
〈執筆協力〉
山手デンタルアートスタッフ
遊亀 由明/山田 昭徳
金安 麻未/遊亀 知栄