nico 2020年10月号(新聞クイント11月号掲載分)
『小さいけれど大きな話。ミクロの世界で見る 脱灰と再石灰化』より 桃井保子(鶴見大学名誉教授)、千葉敏江(鶴見大学歯学部電子顕微鏡センター)
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ミクロの世界で歯はどう見える?
「脱灰」と「再石灰化」という言葉は、歯みがき剤のCM などで耳にしたことがある人も多いでしょう。
脱灰は、むし歯菌のつくる酸などにより歯の成分が溶け出してしまうこと。再石灰化は、その溶け出した成分が歯に戻ることをいいますが、歯の内部で実際にどのような変化が起こっているのか、見たことはあるでしょうか。今月は大学の研究室で撮影した電子顕微鏡写真をもとに、そうしたミクロのレベルの歯の変化をお見せします。
脱灰でエナメル質はどう見える?
ここでは、歯の外側の部分である、エナメル質の脱灰の様子を見てみましょう(実験で再現した写真です)。
①は健全な状態のエナメル質です。表面は光沢がありツルツルしています。この表面にプラーク(細菌のかたまり)が付き成熟すると、細菌のつくり出した酸がエナメル質の内部へと浸透します。すると、②のようにうっすらと表層が溶けていきます。このとき、内部でもエナメル質が溶けています。
このまま酸と触れる状態が続くと、やがては表面の層がボロッと崩れ落ちます。これが③の脱灰が進行した状態です。魚のウロコのように見えますが、ひとつひとつのウロコは、エナメル質の内部に規則正しく並んでいる「エナメル小柱」の表面です。脱灰で歯が溶けることで、小柱が露出してきてしまうのです。ここからさらに脱灰が進めば、小柱がどんどん崩れていきます。
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「nico」10月号では、歯のミクロの変化を収めた写真を、このほかにも多数掲載しています。ふだん目にすることのないレアな写真が目白押しですよ!