nico 2021年1月号(新聞クイント2月号掲載分)
『知ると知らないでは大違い! 親知らずを抜く前にお読みください。』より 矢郷 香(国際医療福祉大学三田病院歯科口腔外科部長)
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なぜ放っておくとよくないの?
骨の中で横向きに埋まっている、あるいは傾斜して頭を出している親知らずは、生えようとして隣の奥歯を押して傷めたり、隣の歯との隙間にプラーク(細菌のかたまり)を溜めこんでむし歯や歯周病を起こすトラブルメーカーです。
まっすぐ正常に生えているなら抜く必要はありませんが、「将来トラブルが起きる」と歯科で指摘されたのでしたら、遅くならないうちに抜くことをおすすめします。
だましだまし過ごしているうちに、親知らずが原因のむし歯や歯周病で、治療が手遅れになるほど隣の歯が傷んでしまったり、歯並びがおかしくなって奥歯で噛めなくなったり。親知らずの周りに起きた炎症が歯ぐきから舌の下、頬や首の組織へと広がって発熱し、入院が必要になることもめずらしくありません。
大ごとにならないうちに抜きましょう!
問題のある親知らずがあるけど、「腫れや痛みがひどくなったら、そのときは覚悟を決めて抜こう」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、強い炎症が起きている最中の抜歯は、避けなくてはなりません。炎症によって生じる酸が麻酔薬の効果を打ち消すため、麻酔が効きにくくなってしまうのです。
炎症があるなか抜歯をすると治りが遅いですし、二次的な感染症を起こして痛みや腫れがひどくなることもあります。くわえて、年齢が進むと、歯とあごの骨の癒着が起きやすく、抜くのがとてもたいへんになります。
事前の準備にご協力ください。
安全に抜歯を受けていただくために、歯科ではこんなことをお願いしています。
・持病についてお教えください:糖尿病で血糖のコントロールが不十分な方は、抜歯後に感染を起こしやすく、治癒が遅くなります。高血圧や心臓病の方は、抜歯中に血圧や心拍数が上がり、脳出血や心筋梗塞を起こすと危険ですので、血圧や脈拍を確認し、ドキドキしにくい麻酔薬(アドレナリンを含まない)を選んで抜歯します。
・お薬についてお教えください:血液サラサラのお薬(抗血栓薬)や糖尿病のお薬、骨粗しょう症のお薬や注射は、抜歯時の出血や体調、その後の細菌感染に影響します。ご自分の判断で休薬せず、まずお薬の服用の有無をお教えください。
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「nico」1 月号では、この他にも抜歯当日・抜歯後の注意事項や、患者さんからのよくある疑問についてご説明しています。気になる親知らずのある方はぜひご一読を!