学会|2024年11月22日掲載

「混合歯列期における早期治療の役割」をテーマに

東京矯正歯科学会、2024年度秋季セミナー開催

東京矯正歯科学会、2024年度秋季セミナー開催

 さる11月21日(木)、有楽町朝日ホール(東京都)において、東京矯正歯科学会2024年度秋季セミナー(西井 康会長)が開催され、651名が参集した。今回は小野卓史氏(東京科学大学)をモデレーターに、「混合歯列期における早期治療の役割」をテーマとして山口徹太郎氏(神奈川歯科大学)、三村 博氏(東京都開業)、水野高夫氏(長野県開業)が講演を行った。

 最初に登壇した山口氏は「早期治療によりもたらされた他院からの転院、あるいは再治療症例から学ぶもの」と題し、大学病院の歯科矯正科にて臨床にあたる立場から、特に一般開業医でⅠ期治療(混合歯列期における早期治療)を受けていた患者の転院および再治療について、科で応診した11症例および臨床上の判断に役立つ文献を挙げながら解説した。早期治療には体系的なエビデンスはなく、過剰な治療や介入時期を誤ると、治療・再治療のすべてが問題を複雑化させるリスクがあること、患者の成長発育に応じた治療戦略と個々の対応が必要であることが述べられた。

 次に三村氏が「診療ガイドラインを踏まえ早期治療の治療目標をどう設定するか?」と題し講演した。今般7版が発刊された歯科矯正学テキストに「早期治療」の定義が掲載されたこと、およびMinds 診療ガイドラインや日本矯正歯科学会による「上顎前突のガイドライン」などといった公的な診療ガイドラインに掲載されている早期治療に対する慎重な見解について解説した後、「しかし臨床歯科医としての立場からは、臨床現場に利しているものとも言えない」とし、自身の手掛けた症例から見えてきた傾向や、早期治療が奏功する患者も少なからずいることをふまえた私見を述べた。

 また水野氏は、「口腔機能の視点から考える混合歯列期における早期治療の役割とは?」と題して講演した。変化の速い成長期にある小児の口腔内は、軟組織が大きく影響・関与するという前提に立ち、「呼吸・嚥下」「筋肉」「姿勢」「習癖」という口腔機能に影響する要因のうち生命維持機能としてプライオリティの高いものから順に影響とそれに対する軟組織への対応やMFTなどを含めた早期治療について説明を行った。

 いずれの講演でも、早期治療は奏功した際の達成感や患者の満足感は大きいが、変化が急峻で多岐にわたる「成長」「成長期」を対象とするためにエビデンスや治療法の確立が難しく、治療・研究対象として扱うことの困難さが語られた。質疑応答では、治療目標や量的指標についての質問が相次いだ。

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