関連キーワード

2023年9月号掲載

新会長に就任した日本歯科医師会の「顔」

若者たちが歯科の将来に対して希望をもてる歯科界にしたい

 高橋英登氏は、2015年より日本歯科医師連盟会長に就任し、政治活動をつうじて日本歯科医師会を支えてきた。選挙公約には「物言う歯科医師会」のワードを強調し、「歯科医師を目指す若者たちが歯科の将来に対して希望をもてる歯科界にしたい」との想いを胸に、これまでも連盟の活動をつうじて実行力・実現力を内外に示してきた。高橋氏に歯科界の活性化・改革を期待する声は大きい。本欄では、新会長に就任した抱負と日歯の今後の方向性についてうかがった。

高橋:6月16日付けで日本歯科医師会(以下、日歯)会長に就任いたしました。日本歯科医師連盟の会長として7年あまり培った経験をもとに、歯科界の考えを主張する「物言う歯科医師会」の姿勢を示しつつ、現場で診療を行う会員の先生方の意見をすくい上げる「身近な歯科医師会」を基本スタンスに会務運営を進めてまいります。

 超高齢社会を迎えたわが国では、医療、介護、生活支援・介護予防など、地域が主体となった地域包括ケアシステムの構築が求められ、歯科界としても国民の健康維持には多職種との緊密な連携、協力がきわめて大切であると認識しております。

 日歯の活動目的は、口腔の健康管理をつうじた国民の健康増進であり、人生の最期の日まで「自分の口で美味しく食べられる」を目指し、ひいては「健康長寿社会の実現」への貢献です。令和5年6月に閣議決定された、「骨太の方針2023」においては「生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)」が示され、口腔の健康が全身の健康や健康寿命の延伸につながることが周知されつつあります。国民皆歯科健診の社会実装に向けた検討を進め、医療費の最適化にも貢献したいと思います。また、国が進める医療DX「全国医療情報プラットフォーム」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」――3つの柱のシステム導入について現場の医療機関に混乱が起こらぬよう、段階的に準備を進めることを国に要望するとともに、昨今の物価高騰や人件費の上昇から歯科医療機関は厳しい状況に置かれている現状において、引き続き医療関係団体と協力・連携を図り、国に理解が得られるよう努める所存です。

 わが国の医療は国策で執り行われております。ゆえに、会務を執行するにあたり、立法府、行政府に対するさまざまな提案やていねいな説明が重要です。日歯の会長として矜持をもって、会員の先生方が歯科医療に傾注できる環境を創生します。

 また、私が大切にしている言葉の1つに稲盛和夫氏の「動機善なりや、私心なかりしか」という言葉があります。「行動を決意するときに私利私欲からではなく、動機の善悪を、自問自答せよ」と戒めている言葉です。この言葉を念頭に置き、つねに公正であるかの矜持をもって、歯科医師が国民から賞賛の声をいただけるように、全力を尽くしてまいります。そして歯科界の未来を担う舵手として、粉骨砕身の覚悟で大胆な改革に取り組む所存です。