評者:白石和仁(福岡県・白石歯科歯周再生クリニック)
いやはや驚いた! いや,おったまげた‼ 著者の宮本泰和先生が表舞台から姿を消されて(地下に潜られて?)はや7 ~ 8 年になるだろうか? その間にこんな本をしたためられておられたとは…….まず,この本は評者の書いたようなただのHow to本ではなく,はたまたエビデンスオタクが書いたような小難しい教科書のような本でもない.真のEBM(Evidence+Experience)に基づいた類稀なる良書であることを記しておきたい.
実際にページを捲ってみると,著者の37年にわたる歯周治療の真髄が余すところなく随所に散りばめられており,読み始めると息も吐けずに一気に読み終えてしまうほどおもしろい.また,写真の1 枚1 枚が通常の成書よりもかなり大きく,規格化されて手を抜くことなく撮影された各ステップが,まるで連続写真のようでわかりやすく美しい.
特筆すべきは,ペリオオタクたちの待ち望んでいた垂涎の1 冊であるだけに留まらず,CHAPTER 4 , 5 では実際に再生療法に取り組む場合の治療手順のポイントや,部位特異性の解剖学的留意点などもていねいにわかりやすく解説されている.また,著者が患者との信頼関係を構築し,継続していくことを何よりも重要視していることが随所に読み取れ,これから再生療法に取り組もうと思っているビギナーの先生たちにもお薦めの本となっている.
遡ること十数年前,当時宮本先生と近しかった先生がいっていた言葉を思い出した.「凡人が全顎的な歯周治療をやれば1 か所,2 か所は大体失敗する.宮本先生の凄いところはそれがない」なるほどと思った.本書においてもCHAPTER 6 の3 つのケースは圧巻である.ただし,宮本先生もやはり人の子,失敗はするらしく(少し安心した),CHAPTER 9 では恐らく数少ないであろうその失敗を惜しげもなく披露し,原因の考察からリカバリーまでの手順をていねいに解説してくれているところがうれしい.
そして,CHAPTER 7 の症例を担当された勤務医の尾野誠先生はさすが卒後すぐから宮本先生に鍛えられただけあって診査・診断から術式の選択までが的確であり,その卓越した技術とセンスには非凡なものを感じる.将来が楽しみな有望な若手である.
あぁ,この文字数では書き切れない.買うべしっ!
評者:瀧野裕行(京都府・タキノ歯科医院)
『歯を保存する努力のなかで,患者との信頼関係が生まれる.信頼される歯科医師をめざすなら歯の保存の可能性をまず考えるべきだ』.20年前,師から授かったこの言葉が評者の胸に突き刺さった.インプラント治療が脚光を浴び,あたかもインプラントが万能であるかの如くいわれた時代であった.そんな評者の歯科医師人生の師である宮本泰和先生が,ついに満を持して歯周再生療法のバイブルを上梓された.本書は日本臨床歯周病学会やJIADSを中心として多くの臨床家を牽引されてきた宮本泰和先生とともに,その系譜を受け継ぎ令和を担うペリオドンティストになりつつある尾野誠先生によってつくりあげられた必読の1 冊である.
歯周組織の再生は歯科医師にとって究極の目標であるが,技術的にも難しく,なかば諦めてしまっている歯科医師も少なくない.しかし失敗の多くはテクニカルな部分だけではなく,「診査,診断に基づいた治療戦略」,つまりストラテジーの構築と実行が不十分であり,本書では実際の手技に加え,診査,診断に基づいた治療計画の立案からメインテナンスに至るまで詳細に記されている.本書を手にとってまず感じたことは,規格性のある美しい写真が大きくレイアウトされており,吸い込まれるようにテンポよく読み進めていけるという点であり,さまざまな視点から成功を導くヒントが散りばめられている.構成としては,歯周再生療法の変遷からテクニカルポイント,部位特異性を考慮した再生療法,全顎的重度歯周病に対するアプローチを長期経過症例とともに記している.また,根面被覆術への応用も本書を読むことで確実に習得できる.そして近年注視されているインプラント周囲炎に対する再生療法に関しても述べられている.つぎに多くの臨床家の頭を悩ます「歯周ポケット,骨欠損の再発」についても長期症例をもとに原因の追及や対処法が記されている.最後に,現在注目されているリグロス®について,エムドゲイン®との比較を交えて考察が述べられており,すべてが必読のコンテンツとなっている.
熟練した臨床家から若手歯科医師までのすべての歯科医師に対し,自身の歯の保存基準を覆してしまうような症例の連続を刮目していただきたい.この本をとおして歯周再生療法を成功へと導く歯科医師が数多く生まれ,日本国民のさらなる健康増進が達成されることを大いに期待している.