社会|2024年10月28日掲載

医科歯科ともに関連性の高い話題を中心にバラエティーに富んだ講演が行われる

第5回くちを大きく考えるシンポジウム開催

第5回くちを大きく考えるシンポジウム開催

 さる10月27日(日)、TKP神田ビジネスセンター(東京都)において、第5回くちを大きく考えるシンポジウム(株式会社野村クリエイト主催)が開催され、会場には医療関係者を中心に約80名が参集した。

 冒頭の開会挨拶にて、発起人の野村洋文氏(埼玉県勤務)は、将来的に歯科が医科に組み込まれる可能性を示唆するとともに、本シンポジウムの開催目的には「未来への投資」を挙げた。

 午前の部では、菊谷 武氏(日歯大教授、同大学口腔リハビリテーション多摩クリニック院長)による講演「食べるを支える、食べられないを支える」、堀内美希氏(弁護士、歯科医師)による講演「患者さんに訴える!と言われたら」、岡本高太郎氏(福岡県開業)による講演「お口ポカン~~歯科からのアプロ―チ。今後の展望」の3題が行われた。

 菊谷氏の講演では、1)治療的、2)代償的、3)環境改善的――食べるを支えるための3つのアプローチについて言及。在宅終末期がん患者は、人生の最終段階に近づくにつれ食べられなくなり口腔衛生状態が悪化する現状とともに、介助者の食べさせる選択・食べさせない選択、双方のジレンマについて述べた。そして、いくつかのエピソードとともに命にかかわる選択に絶対的な正解はなく、介助者の意思決定支援に寄り添うことの大切さを説いた。

 堀内氏の講演は、野村氏の質問に回答する対談形式にて行われ、主に矯正歯科治療、抜髄・抜歯治療による患者さんとのトラブルが質問に挙げられた。堀内氏は、さまざまなトラブル事例に対し「患者さんの訴えをまずは傾聴し、けっして感情的になってはいけない。開示要求には素直に応じ、必要に応じて歯科医師の方からセカンドオピニオンを提示することや『絶対治る』など不確実な発言は控えること」といった助言が送られた。

 午後の部では、山口 隆氏(建築家、元大阪産業大教授・学長補佐、元ハーバード大客員研究員)による特別講演「建築とは?」、片山祐子氏(株式会社おもてなしパートナーズ代表取締役元、元客室乗務員)による講演「おもてなしで人生の質を上げましょう!~口は災いの元?~」、細田正則氏(医師、ほそだ内科クリニック院長)による講演「口から始める内科診療」、三木健司氏(医師、大阪行岡医療大医療学部特別教授、早石病院疼痛医療センター長)による講演「痛み止めを整理しましょう」の4題が行われた。

 特に山口氏の特別講演では、日本と西洋で異なる模倣から始まるソリューションについて言及され、西洋の「architectura」は技術の根源の追求やイデア(概念・観念)を顕在化させる創造的な学問であるのに対し、日本の「建築」は建築物をつくることに傾注した実用的な学問である文化の違いが解説された。また、三木氏の講演では、神経系の正常な痛み信号の解釈の誤りに起因する痛み「痛覚変調性疼痛」について説明がなされ、患者さんのすべての慢性的な痛みを医学的に説明することの困難さにふれつつも、「その痛みの訴えに対し、正しい治療アプローチとしてよく検討したうえでの痛み止めの処方なのか?」といった昨今の痛み止めの処方のあり方に疑問を投げかけた。

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