社会|2024年12月4日掲載

ムーシールド発売20周年を記念して

筋機能矯正装置臨床応用シンポジウム開催

筋機能矯正装置臨床応用シンポジウム開催

 さる12月1日(日)、ベルサール飯田橋駅前(東京都)において、筋機能矯正装置臨床応用シポジウム(株式会社 JM Ortho主催)が開催され、多数の参加者が集った。本シンポジウムは、反対咬合に対する早期初期治療に用いる機能的顎矯正装置「ムーシールド」の本邦での発売20周年を記念して企画されたもので、ムーシールドの開発者である柳澤宗光氏(東京都開業)を含めて、7名の演者が登壇した。

 午前中の講演では、まず柳澤百子氏(東京都開業)が「ムーシールド・ムータンの臨床~明日から役立つ臨床のヒント~」と題して登壇。反対咬合の為害性と低年齢時から反対咬合の改善を試みることの意義、そしてムーシールドでの反対咬合の治療プロセスを紹介しつつ、治療を成功させるため勘所を解説した。また、「良好な治療結果を得るには、医療者と患児・保護者が共通の認識をもって治療に臨むことが重要である」と強調した。

 続いて、徳倉 健氏(愛知県開業)が「『こんな時どうする??』ムーシールドの実際と保護者対応」と題して登壇し、ムーシールドを用いて反対咬合の治療を行っていく際に遭遇するトラブルや患者からの訴えへの対応を紹介するとともに、長期間にわたる治療のなかで保護者と良好な信頼関係を築くためにはどのようにコミュニケーションをとっていったら良いかについて詳しく解説。今後起こりうることについて、事前に情報提供することが肝要と述べた。

 次に登壇した仲谷龍太郎氏(神奈川県勤務)は、「U-Conceptの効果及び有効な使用法について」と題して講演。筋機能矯正装置「U-Concept」について、特徴や適応症、そして複数あるタイプをどのように使い分けるか、症例を交えて解説した。また、Dr. RickettsとDr. Guginoが提唱するアンロッキングの概念を紹介し、機能的アンロッキングと形態的アンロッキングの両方にアプローチしていくことが重要と述べた。

 午後の講演では、まず金子和之氏(高知県開業)が「既製機能的矯正装置(マルチファミリー)を用いた予防矯正歯科治療」と題して登壇。2期治療が必要となる患児を減らしたいという氏の夢を述べ、下顎劣成長および、それに関連するトラブルへ早期に介入することの意義と必要性を強調した。また、症例に合わせた装置の選択や調整の勘所について、多くの症例とともに解説した。

 続いては、勝見聡子氏(東京都開業)が「マルチファミリーの臨床応用―いかに使用を定着させるか―」と題して登壇。マルチファミリーを用いた予防矯正について、特に装置を継続して使用してもらうための保護者・患児への動機づけや使用感の改善などの工夫について述べた。また、症例を提示しつつ、臨床的な勘所について解説した。

 次に登壇した權藤総一郎氏(佐賀県開業)は「呼吸を制する者は咬合を制する」と題して講演。自身が呼吸、特に鼻に興味をもった経緯と呼吸に着目した臨床について、症例を供覧しながら述べた。

 最後に、柳澤宗光氏が「ムーシールドの誕生」と題して登壇。ムーシールドの着想を得てから学会での発表などを経て既製品として発売されるまでの経緯を紹介しつつ、口腔周囲の筋機能の不調和という不正咬合の原因にアプローチする、原因療法としてのムーシールドのコンセプトを解説した。また、将来、治療が困難となる反対咬合症例へと進ませないためにも、反対咬合に低年齢時から介入する早期初期治療の必要性を述べた。

 全講演の終了後に行われた質疑応答では多数の質問が寄せられ、演者は熱心に回答していた。熱気に包まれたまま、シンポジウムは成功裏に終了した。

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