社会|2024年9月9日掲載

講師に仲井雪絵氏を迎え、周産期の母子歯科保健指導の重要性を伝える

静岡県歯科医師会、令和6年度母子歯科保健講習会を開催

静岡県歯科医師会、令和6年度母子歯科保健講習会を開催

 さる9月8日(日)、令和6年度母子歯科保健講習会(静岡県歯科医師会主催)が、講師に仲井雪絵氏(静岡県立大短期大学部歯科衛生学科教授)を迎え、「未来への健口投資を支える母子保健のすすめ! 生まれる前から始めるう蝕予防戦略」をテーマに、静岡県歯科医師会館およびWeb配信のハイブリッド形式にて開催された。

 本講習会において仲井氏は、MS菌(ミュータンスレンサ球菌)の母子伝播を予防するために妊婦へ保健指導や予防処置を行うことを「プライマリー・プライマリー・プリベンション(primary-primary prevention;PPP)」とよび、この小児う蝕の最先端予防戦術として知られているPPPの有効性を科学的に示し、実践可能で成果の上がる方法を紹介した。

 これまでの小児のう蝕予防は、主に子どもの定期健診などによる生活習慣病対策であったが、この方法では限界があると述べた。そして、もともとのMS菌の感染源である大人のう蝕が増加している資料を供覧し、これからは感染症的側面からの対策、つまり主な感染源である母親の口腔内環境の改善が必要とした。

 一般的なう蝕予防としては、スプーンや箸などの食具の共有を避けたり、ショ糖を含む清涼飲料水やお菓子などを与えないことが有効とされている。しかし、日々の育児のなかでこれらを実際に実施することは難しいこともあり、現実的な対策として感染源の口腔内のMS菌の量ではなく質を変えることが有効として数々の論文などを供覧してその根拠を説明。そのなかでも妊娠6か月以降の周産期よりキシリトールガムを摂取すると、母親のMS菌の質が変化し、子どもへのMS菌伝播が予防されることが示された。

 最後に仲井氏は、う蝕菌感染対策のゴールは「予防と遅延」であり、2歳まではMS菌を感染させないことがその後のう蝕予防を楽にすると強調。子どもへのMS菌の伝播は主に母親(家族)からではあるが、この家族単位の取り組みを地域コミュニティレベルに拡充することで、現在都道府県によって約3倍ある3歳児のう蝕罹患率の地域格差を縮めることができると述べた。

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