学会|2024年9月30日掲載

歯科医史学の研究成果や考察など、多角的な視点から講演が行われる

第52回日本歯科医史学会総会・学術大会開催

第52回日本歯科医史学会総会・学術大会開催

 さる9月28日(土)、東京ガーデンパレス(東京都)において、第52回日本歯科医史学会総会・学術大会(石橋 肇会長、渋谷 鑛理事長)が開催された。

 石橋氏の開会挨拶の後、午前の部では、一般演題12題が発表された。特に一般演題1では、竹原直道氏(九歯大)が座長を務め、西巻明彦氏(日歯大、医の博物館館長)が「日本の『貴族』という用語の考察」、「『紫式部日記絵詞』にみる歯科的事項」の2題について講演した。『紫式部日記絵詞』とは平安時代の権力者藤原道長と平安貴族の様子を描いた日記文学の傑作といわれている作品であり、西巻氏は当時の記録から歯科的事項について考察。「房楊枝の使用や女性貴族の口は閉じて描かれている様子から貴族階級にとって口腔清掃は重要だった、口もとの描写は貴族階級の品格の表れ」などとまとめた。

 次に、一般演題2では安細敏弘氏(九歯大)が座長を務めた。そのなかでも特に那須郁夫氏(日大名誉教授)による「竹内の齲蝕発病理論の歯科疾患実態調査から見た至当性」と題した講演では、砂糖摂取とう蝕の関連研究において大きな功績を遺した竹内光春氏の取り組みや国民1人あたりの年間砂糖消費量のデータを供覧し、「疫学的には、1人あたりの年間砂糖消費量がう蝕発病のもっとも重要なパラメータであることが説明できる」と述べ、竹内氏の考察について評価した。

 引き続き午後の部では、渋谷氏(日大松戸歯学部)が座長を務め、石橋氏による会長講演「日本の歯科における救急蘇生法について―世界の救急蘇生法の歴史とともに―」が行われた。石橋氏は、古代から中世にかけて試みられた鞭打ちや外部からの温熱、樽の上を転がす、溺死に対する逆さ吊り法など、さまざまな蘇生法を当時の写真や資料とともに供覧。そして、近年の人工呼吸や心臓マッサージまで行きついた歴史とともに、過去に本会の理事長を務めた谷津三雄氏(故人)の歯科における救急蘇生の普及に果たした功績を解説した。なかでも1960年代には、救急蘇生法ABCD(A:Airway〔気道確保〕、B:Breathing〔人工呼吸〕、C:Circulation〔循環:心臓マッサージ〕、D:Drug〔薬物治療〕)がすでに詳細に記されていたことが力説された。

 さらにその後、一般演題12題が行われ、故人の功績や当時の時代背景・文化をふまえた歯科医史学の研究成果や考察など多角的な視点から講演が行われ、盛会となった。

 なお、次回の第53回日本歯科医史学会総会・学術大会は、きたる2025年11月1日(土)福岡県において、安細大会長(主幹校:九歯大)のもと行われる予定である。

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