社会|2025年1月27日掲載
歯科領域での抗菌薬の使用についても解説
AMR臨床リファレンスセンター、メディア向けラウンドテーブルを開催
さる1月24日(金)、銀座松竹スクエア(東京都)において、国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター(大曲貴夫センター長)によるメディア向けラウンドテーブルが開催された。テーマは、「内科、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科、歯科領域における薬剤耐性(AMR)の現状、各科の課題と実践すべき事項」であった。
本会では、はじめに藤友結実子氏(医師、AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室長)が、「AMRとは/AMRの現状と課題」と題して、ウイルスによる上気道の症状である「かぜ」に対して、細菌の増殖を抑制したり殺したりすることを目的とした抗菌薬の処方は無意味であることを解説した。しかし、風邪に抗菌薬が有効であると誤解している人が多く、そういった患者さんの求めもあって医師も処方せざるを得ない現状についても述べた。
そのうえで、WHOが現在推進している抗菌薬のAWaRe(アウェア)分類について解説した。AWaRe(アウェア)分類とは、WHOが定めた抗菌薬の適正使用推進を目指したツールで、抗菌薬をAccess(一般的な感染症への第一、第二選択となる抗菌薬)、Watch(耐性化した際に他の選択肢が少ないため不適切な使用で薬剤耐性菌の急拡大につながる恐れがある抗菌薬)、Reserve(最後の手段として使用すべき抗菌薬)に分け、各国で使用される抗菌薬の60%以上をAccess抗菌薬にしようという目標をWHOが掲げていると締めくくった。
次に、佐々木秀悟氏(医師、AMR臨床リファレンスセンター情報・教育支援室)が、各診療科での問題点について解説した。そのなかで、歯科領域での抗菌薬の使用について、歯性感染症で推奨される抗菌薬の第一選択薬はAccess抗菌薬のペニシリン系またはリンコマイシン系だが、実際はWatchに分類される第3世代セフェムを処方している歯科医院が多く、問題があるのではないかと指摘した。また、第3世代セフェムは口腔レンサ球菌や嫌気性菌に対して有効とはいえず、経口摂取での吸収率も低いことから、薬剤耐性菌を増やさないためにも、感染予防のためにはグラム陽性球菌を対象にした対象範囲が限定的な薬を選択し、使用する日数を短くしてほしいとまとめた。