社会|2025年3月24日掲載
80名を超える参加者を集めて、インプラント治療にかかわる広範なテーマが語られる
KNOWLEDGE JUNCTION FOR DENTISRY開催
さる3月20日(木)、ブリーゼプラザ小ホール(大阪府)において、KNOWLEDGE JUNCTION FOR DENTISRY(阿部公成氏主催)が80名を超える参加者を集めて開催された。本会は、東海および関西・中四国に拠点をもつ30~40代の若手歯科医師らがスタディグループの垣根を越えて、主にインプラント治療に関する情報を交換する場として発足した。今回は、7名の歯科医師が講演を行い、丸尾勝一郎氏(東京都開業)がモデレーターを務めた。
開会の挨拶ののち、木村正人氏(岡山県開業)が「エビデンスが支えるインプラント治療計画:ポジション、形態の最適化」、粟谷英信氏(兵庫県開業)が「ゼロボーンロスコンセプトと臼歯部抜歯即時埋入」の演題で講演した。木村氏は固定様式の選択基準、アバットメントの選択基準についてエビデンスとなる文献や自身の臨床経験を基に見解を述べ、粟谷氏はゼロボーンロスコンセプトに基づいた臼歯部抜歯即時埋入のメリット、初期固定の確保や軟組織の厚みの重要性を説いた。
そして、萩原 誠氏(兵庫県勤務)は「前歯部複数歯欠損症例の術式選択」の演題で、前歯部複数歯欠損における術式選択のディシジョンツリーを提示して臨床例を供覧し、PET(Partial Extraction Therapy)やSST(Socket-Shield Technique)の術式についても解説した。その後、菅田真吾氏(大阪府開業)が「軟組織マネージメントが導く審美インプラント治療」の演題で登壇。骨造成を行ったとしても埋入ポジションが悪ければPSTD (Peri-implant Soft Tissue Dehiscence/Deficiency)などを発症してしまうため、インプラントが適切な位置に埋入されていることを絶対条件として、インプラント埋入前に最終補綴装置から逆算したインプラント唇側の軟組織の厚みをどのように担保するかを考慮して治療計画の立案をするべきだと強調した。
昼休憩ののち、阿部氏(愛知県開業)が「デジタルソリューションで実現するインプラントの新基準」、大島健吾氏(香川県開業)が「ボーンアンカードブリッジの成功戦略:審美性と清掃性の両立」、奥田浩規氏(兵庫県開業)が「インプラント治療の合併症を最小化するための治療戦略」と題して講演。阿部氏は、最近は抜歯即時埋入、即時印象を行っていると説明した後診断にデジタル技術を応用することで治療期間の短縮に成功した症例を挙げ、患者・術者双方にメリットがあることを示した。続いて大島氏は、適切に治療法を選択するためのインプラント補綴分類のディシジョンツリーを提示しつつ、上顎にボーンアンカードブリッジを用いた全顎治療の症例を供覧。治療計画時には、治療ゴールとして設定した歯冠の位置についてモックアップなどを用いて実際の口腔内で確認することが重要だと述べた。講演会のトリを務めた奥田氏は、過去に経験したトラブル&リカバリーのケースを供覧し、「インプラントポジションの悪さや上顎洞迷入などといった外科的合併症がのちの補綴的合併症に大きく影響するため注意が必要である」と強調した。そして、インプラント治療の成功のための要素として検査・診断、補綴主導型のインプラント治療、インプラントの適正な埋入ポジション、一口腔単位での診断が挙げられるとまとめた。
参加者は若手歯科医師が多く、質疑応答では参加者やモデレーターからの質問が飛び交い、活気のあるディスカッションが行われ盛会裏に終了した。