社会|2025年3月31日掲載
三枝慶祐氏が最優秀賞、相澤知里氏と植村勇太氏が優秀賞を受賞
全国歯科大学・歯学部若手歯科医師臨床症例発表会が開催
さる3月30日(日)、歯科医師会館において、日本歯科医師会(以下、日歯、高橋英登会長)による全国歯科大学・歯学部若手歯科医師臨床症例発表会が開催された。本発表会は、大学に在籍している若手歯科医師が症例報告を行うことで、専門的な知識と技術の共有を図り、臨床意欲やスキルの向上につなげるとともに、日歯と大学との連携強化および日歯の活動について理解を深めることを目的として開催された。
冒頭、末瀨一彦常務理事による開会の辞、高橋会長による主催者挨拶が行われ、開催趣旨の説明ならびに期待の言葉が述べられた。
その後は、参加19大学19名による演者の発表が行われた。なかでも相澤知里氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野)の講演「舌腫瘍術後の再建皮弁形態変化を伴う摂食嚥下障害に対して舌接触補助床で対応した症例」では、舌腫瘍術後、舌運動が著しく不良で嚥下機能評価でも機能障害が疑われた患者の症例を供覧。嚥下と舌可動域拡大訓練に加えて舌接触補助床を装着したことで、舌圧の改善や口腔内残留を減少させ、摂食嚥下機能を回復させた事例を示した。
また、栗原崇實氏(大阪歯科大学高齢者歯科)の講演「後期高齢者において在宅診療を考慮し、咬合再構成を行った包括的歯科治療症例」では、多数歯欠損に対し、重度な咬合崩壊と診断した症例を供覧。患者は義歯装着経験がなく、老々介護かつ認知症が疑われる状態であることを考慮し、義歯の紛失の可能性も含めて容易に再治療を行え、在宅でも対応しやすい治療計画で患者のQOLの維持・向上に配慮するなど、示唆に富む内容が披露された。
その他、歯周疾患や歯内療法、矯正歯科治療、補綴治療、再生療法、審美歯科治療など多様なジャンルの講演が展開され、全身状態・疾患との関係も含めた横断的な視点でとらえることの大切さがうかがえた。また、各講演後には有識者6名の審査員による質疑応答が行われ、鋭い考察やフィードバックが贈られた。また、保険診療のなかで最良の治療に努めた症例発表に対して高橋会長がエビデンスの集積と「医療技術評価(再評価)提案書」の重要性について説く場面もみられ、新規技術の保険収載が歯科のイノベーションに寄与することを強調した。
なお、発表会終了後はアルカディア市ヶ谷(東京都)において、審査結果発表・表彰式・懇親会が行われた。審査の結果、三枝慶祐氏(日本歯科大学生命歯学部歯科保存学講座)が最優秀賞、相澤氏、植村勇太氏(徳島大学歯周病科)の2名が優秀賞を受賞した。若手演者らの今後のさらなる飛躍に期待の高まる一日となった。