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2021年11月号掲載

課題提案型で歯科医院の活性化を目指す

診療以外の悩みを最小化し、診療以外のプラスαを最大化したい

 年間150回以上の院内セミナーの講師として招聘され、歯科医院活性化請負人と称される角 祥太郎氏(歯科医師、株式会社clapping hands代表取締役)。勤務医から医療法人の経営者、起業家を経て、現在は教育者として講義、講演の傍ら臨床そして執筆活動にも全力で取り組む氏が、院長や若手歯科医師に伝えたいこととは――。

:今から5、6年前、とある勉強会で症例発表している自分を振り返った時、違和感がありました。歯科医師が知識や技術を研鑽することはもちろん大切ですが、勉強会やセミナーなどその多くは問題解決型であり、実は診療以外に多くの悩みや問題が潜んでいることに気づかされたのです。患者さんが定期的に歯科医院に来院されるためには、歯科医療以外のプラスαの要素が非常に重要となります。昔は、う蝕をはじめ困っている患者さんが多かったので、問題解決型の“治す”歯科医療でよかったわけです。しかし、現在は歯や口の関心の高まりから、予防歯科や口から食べることの大切さが周知されてきて、さらに呼吸や姿勢、食事、摂食嚥下など生涯にわたって困らないように健康を“支える”ための課題提案型の歯科医療(歯科医院づくり)が求められています。

 院長や経営者は、問題解決型から課題提案型に考え方や歯科医院づくりを変えていかなければならないと頭では理解しているものの、実際はどのように対応すれば良いかわからず、現場のスタッフとの考え方に乖離があります。診療には正解があるので、スタッフはミスを起こさないように上司の指示を聞きがちです。課題提案型の歯科医院をつくるためには、指示待ちではなく正解のない提案をいかにスタッフに出してもらうかが鍵となりますが、私が医療法人の経営に携わっていた時、その考え方が言語化できておらずスタッフからの不平や不満が出ていた失敗から、ミーティングの重要性をあらためて見直すことになりました。

 私はこれまで経験した失敗をもとに、院長が地域で目指す歯科医療のビジョンや考え方と、スタッフからの提案をつないで言語化するという仕組みについて院内セミナーでお話ししたところたいへん好評をいただき、全国各地から講師としてお声がけいただき現在に至っています。私の役割は、診療以外の無駄をできるだけなくして円滑にするために、正解のない現場での考え方のテンプレート(雛型)を提供することで歯科医院全体の診療以外の悩みを最小化し、患者さんに提供できる診療以外のプラスαを最大化することです。

 歯科医院がコンビニより多い時代だからこそ、健康寿命を延ばすための情報を定期的に発信できる歯科医院は価値があります。また、患者さんに“なるほど!”と思わせる歯科医療が提供できれば、患者さんの不安が解消されて他の人に伝えたくなります。私は「あらゆる失敗を経験した人間」として、微力ながら歯科医院活性化のお手伝いができればと考えています。