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2025年4月号掲載

病院歯科の発展と社会貢献を目指す

※本記事は、「新聞クイント 2025年4月号」より抜粋して掲載。

医科と歯科をつなぐ役割としての病院歯科を普及させたい

 歯科を標榜する病院の割合は2020年で22.1%となっており、国が進める地域包括ケアシステムの推進に向けて病院歯科の果たすべき役割は大きいと思われる。また厚労省は2025年に向けて病床の機能分化・連携を進めるために地域医療構想の策定中である。そのようななか、2024年5月に一般社団法人全国病院歯科医協会が設立された。本欄では、会長を務める栗田 浩氏(信州大学医学部教授)に同会の役割と病院歯科を含めた今後の方向性についてうかがった。

 栗田:本会は、病院歯科にかかわる歯科医師、医師、スタッフなどが急性期・慢性期・回復期病棟などの区別や学会および専門分野の垣根を越えて、病院歯科の発展と社会貢献を目指した新しい枠組みとして設立されました。

 現在、わが国では人口構造や社会構造、疾病構造の変化のみならず、家族・家庭構造の変化にともなう医療提供体制の再構築が求められています。その中で歯科医療への対応については、提供体制の未整備や歯科医師の高齢化にともない、地域の歯科医療が提供できなくなる可能性が課題の1つとして挙げられます。

 私は地域包括ケアシステムの中で病院歯科は、地域の歯科診療所の受け皿として歯科医療提供体制に寄与できると考えています。そのためには都道府県や市町村の行政や歯科医師会と連携し、地域の特性に応じた病院歯科の役割をアピールしていくことが求められます。また、現在では病院歯科の機能分化が求められており、これまでのような歯科口腔外科だけでなく急性期・慢性期・回復期病院などでの口腔機能管理を行う病院歯科が設置されています。そこで、地域を支援する病院歯科(地域密着型)としての役割と、歯科口腔外科、摂食嚥下など高次機能を有する病院歯科を整備していくことが必要です。

 病院歯科では、2012年から周術期等口腔機能管理が保険収載されたことで、特に歯科衛生士の役割が重要視されています。また、令和6年度診療報酬改定では回復期・慢性期における口腔機能管理・口腔衛生管理への評価が新設されましたので、その点も期待しています。さらに、多職種連携にとって歯科衛生士は不可欠な存在ですし、歯科診療所の中だけでなく医療の現場で歯科衛生士が活躍することで、病院歯科のさらなる普及にもつながると考えています。なお、このたびの「歯科医療提供体制等に関する検討会」の中間とりまとめでは、病院歯科の役割が明記されたとともにその充実が期待されています。

 これまでは、病院歯科関係者が所属する学会などでのつながりはあったものの、専門性を越えた横のつながり、またその重要性について組織として発信する機会はありませんでした。私は医科と歯科をつなぐ役割こそ病院歯科が担っていると考えています。今後は、組織力を強化するためにも会員数を増やし、病院歯科を発展させて社会に貢献していきたいと思います。