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2025年3月号掲載

理事長に就任した JIADS の「顔」

※本記事は、「新聞クイント 2025年3月号」より抜粋して掲載。

「Longevity」を再確認し、“名医かつ良医”の臨床家を輩出したい

2024年12月、日本を代表する歯科医師・佐々木 猛氏(大阪府開業)が伝統ある卒後研修機関のJIADS の理事長(8代目)に就任した。少子高齢化や情報技術の進歩など、歯科を取り巻く環境と時代の変化への対応が求められるなか、氏はJIADSの特徴の1つでもある「Longevity」の考え方をどのように伝えていくのか。本欄では、組織づくりや果たすべき役割など、氏の想いをうかがった。

佐々木:創設者の小野善弘・中村公雄両先生の強いリーダーシップとカリスマ性はもとより、それぞれの立場と環境の中でJIADSを牽引し、歯科界を代表する組織づくりにご尽力いただいた歴代の理事長に感謝申し上げます。理事長就任にあたり、JIADSの果たすべき役割と今後の運営について、よりいっそう強く責任を感じています。

 これまでは創設者や歴代の理事長の手腕に頼っていた部分が多々ありました。これからは私を含め理事や講師陣が自分ごととして、多角的な視点で自主性をもってそれぞれの意見を出し合いながら英知を結集し、持続可能な組織づくりを目指したいと思っています。今後は、私が理事時代から構想していた各種委員会を設置し、短期・中期・長期の目標設定のもと、その達成のために具体的かつ積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 大学卒業後からJIADSにかかわって30年が経過し、私は会員のだれよりも近くでJIADS の恩恵を受けてきました。JIADSにいたからこそ、私個人の努力だけでは到底体験することのできない貴重な経験と数多くの実績を残すことができました。今回、理事長として組織の舵取りを任される立場となり、ようやく恩返しができる時期がきたというのが率直な感想です。

 そこで私は、JIADSの特徴である「Longevity」を再確認したいと強く思っています。Longevity を達成するためには最低10年が必要です。そのためには患者さんとの信頼関係はもとより、技術や知識だけでなく医療人としての良識、倫理観、人間力、そして医院力が揃って初めて達成できると考えています。すなわち「名医」だけでなく「良医」でなければLongevityは達成できません。

 時代の変化に柔軟に対応するために、最新のトピックスや手技、材料などに関心をもつことは必要です。しかし、伝統ある卒後研修機関として総合歯科治療に不可欠な基本(ベーシック)の重要性はこれからもブレずにアピールしたいと思います。講師陣に対しても、受講生の向こう側にいる患者さんに還元できるような意識をもって歯科医療の知識や技術を伝えてほしいと思っています。

 現在はインターネットやSNS の普及によって、だれもが自由に発信できる時代です。しかし、歯科医療を提供するわれわれは、自己評価ではなく他者評価によって自身の歯科医療に対する評価が得られるのではないでしょうか。JIADSは他者から評価され、日本だけでなく世界で活躍できる臨床家を輩出する研修機関としてあり続けたいと思います。