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2021年9月号掲載

机上の空論ではなく実現可能なアイデアを

 日本では少子高齢化にともない、人手不足が深刻化しており、歯科界も例外ではない。そのようななか、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針2021)」には、「歯科衛生士による歯科口腔保健の充実」と「歯科衛生士の人材確保」が明記された。国の方針として歯科衛生士の人材確保への言及は、口腔健康管理を担う歯科衛生士の役割が期待されている証左である。

 日本歯科医師会は、歯科衛生士の人材確保について「養成校への受験生確保が困難な状況が続き、歯科医療現場でも人材不足が起きている。今後の生産年齢人口の減少の加速をふまえれば、早急な対策が必要である」と見解を示しているが、各都道府県歯が実施する復職支援事業も含めた実施率やその効果など、データとともに検証する必要があるだろう。

 私は日歯代議員として第195回定時代議員会において、歯科衛生士国家試験受験資格について質問した。歯科大学卒業生の約3,000名のうち歯科医師国家試験に合格するのは約2,000名で、残り1,000名は不合格という現状のなかで、歯科衛生士の受験資格を与えてはいかがという提案である。もちろん法改正が必要であるため、賛否両論あることは承知のうえだが、机上の空論ではなく実現可能なアイデアが求められる。

 長引くコロナ禍において先行き不透明な状態が続いているが、国民が安心して歯科医療を受けることができる仕組みづくりが急務だ。歯科衛生士不足で不利益を被るのは、われわれ歯科界ではなく国民なのだから。