2025年2月号掲載
AI 診断で問われる治療説明
※本記事は、「新聞クイント 2025年2月号」より抜粋して掲載。
歯科診療においてAI技術の導入が進んでいる。膨大なデータをもとに、検査や診断の精度が向上し、熟練の歯科医師を凌駕する可能性すらある。この技術革新は、患者にとっても利便性や迅速性をもたらす一方で、その診断プロセスの「見えない部分」が新たな課題を生む。
AIの診断において重要なのは、患者が納得できる情報提供である。歯科医師は治療方針を説明するにあたり、AIが提示した治療根拠を十分に理解して患者に伝える能力が求められる。ブラックボックス化した診断結果だけでは、患者の不安を取り除くことは難しい。そのため、診断の透明性を確保し、説明責任を果たす技術が必要となる。
ここで注目されるのが「XAI(Explainable AI)」だ。XAIは、AIの判断プロセスを可視化し、人間が理解しやすい形で説明する技術である。たとえば、歯科診療における画像診断では、AIが示す異常箇所を視覚的にハイライトし、診断根拠を明示することが可能だ。本技術の活用によって、より説得力のある治療説明や患者との信頼関係の構築が期待できる。医療者側にとっても診断を振り返るきっかけとなるだろう。また、XAIの導入が進むことで、医療現場の業務の効率化やチーム医療の質的向上、さらには患者満足度の向上も期待される。
AIによる歯科医療の変革が進むなかで、技術力のみならず「納得感」を与えられる情報提供の質が問われる時代が到来している。XAIの普及が進み、歯科診療の新たな可能性が広がることを期待したい。