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2024年8月号掲載

歯科AIを活用し未曾有の災害対応へ

 大規模災害時における歯科の役割は、誤嚥性肺炎予防の口腔ケアだけでなく、犠牲者の歯科的身元確認もきわめて重要です。これらの活動には全国からの支援が必要ですが、令和6年能登半島地震では交通網の分断が大きな問題となりました。主要道路が寸断された結果、被災地へのアクセスが非常に困難になり、なかでも奥能登や山間部では救助活動はもとより物資の供給が大幅に遅れました。このような状況は、もし南海トラフ大地震が発生した場合、特に高知県や徳島県、和歌山県など、あちこちで同様のことが起こる可能性が高くなると考えられます。

 そこで、私たちは今話題のAIによる画像分析技術を活用し、口腔内写真やX線写真から犠牲者の身元確認を行うためのデンタルチャートを作成する研究を進めています。この取り組みでは、大阪大学と東北大学の協力を得て、分析や照合の作業を遠隔で支援してもらう仕組みを構築しようとしています。能登半島地震のように被災地支援のため現地入りできる人員が限られることを想定し、現地では資料収集に専念し、デジタルデータを被災地外に転送して身元確認作業を行う仕組みです。発災時には全国の歯科医師会や大学の支援が必要となるでしょう。

 コロナ禍をつうじて私たちは多くの苦難を経験し、失ったものもありました。しかし、オンライン技術を活用し、互助(共助)のもと励まし合いながら社会を維持した経験も得ました。ICTやAIを活用することできっと未曾有の災害にも対応できると信じています。