社会|2024年6月19日掲載

外部講師に牧野日和氏を招聘

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催

 さる6月18日(火)、S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会、中尾 祐会長)によるWebセミナーが開催され、歯科医療関係者を中心に50名以上が参加した。

 今回は外部講師として招聘された牧野日和氏(愛院大健康科学部言語聴覚科学領域教授)による特別講演「シン・摂食嚥下リハビリテーション」が行われた。

 冒頭、牧野氏は摂食嚥下において先行期、口腔準備期、口腔期、咽頭期、食道期――5つのステージに分けることができ、摂食嚥下を評価するうえでそれぞれのステージの着眼点について紹介した。特に先行期における注意事項として、患者さんが食べる心構えができていない状態で半ば強引に口の中に入れようとすることは誤嚥につながるため、介助者は患者さんが食べる心構えができたことを確認して、患者さんみずからが口に食べ物を近づけるような支援のしかたを推奨した。

 次に、キュア(治療)の段階について解説するなかで、ほとんどの生物は大前提として「人生の最終段階では食べられなくなる定めである」ことを強調した。そして、食べられない状態を加速させる要因として脳性麻痺や知的障害、脳血管障害などを挙げつつ、誤嚥は覚醒時では50歳、睡眠時では30歳くらいから始まるため、誤嚥や窒息は身近な存在であることを述べた。

 続いて、ケア(終末期)の段階について解説。特に、食べられない患者さんにおける人生最終段階の食支援のあり方について言及し、「患者さんの(食べない)意思を尊重するべきか、それとも最期まで食べさせるのが良いかの判断は専門化でも難しい。しかし、『最期まで食べられたことが本人にとって幸せなこと』という思い込みは患者さんを苦しませかねない」との見解を示すとともに、りんどうの花言葉「悲しむあなたを愛する」を引用し、日本特有の見取りの文化に一石を投じた。あわせて、患者さん本人だけでなく、悲しみや動揺に苛まされる家族の心のケアの重要性にも述べた。

 講演後の質疑応答では、「患者さんの家族に対する心のケアを含め、どんな説明や振る舞いをすべきか」といった質問が寄せられた。牧野氏は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)のプロセスを大切にするとともに、その家族の意向を十分にヒアリングし、心や想いを交わすこととのアドバイスを送った。

関連する特集