社会|2024年7月9日掲載

「超高齢社会におけるGPの役割」「骨免疫学からみた歯周炎・咬合性外傷・骨吸収と骨形成」などをテーマに講演が行われる

2024年 第43回臨床歯科を語る会が開催

2024年 第43回臨床歯科を語る会が開催

 さる7月5日(金)から7月7日(日)の3日間、クロス・ウェーブ府中(東京都)において、2024年 第43回臨床歯科を語る会(斎田寛之実行委員長)が開催された。本会は歯科臨床の研鑚を目的に1981年に発足され、 1年に一度、全国各地のスタディグループが一堂に会して、歯科におけるさまざまな分野についてディスカッションを行う会である。

 2日目午前には、山田浩之氏(新潟県開業、無門塾)の座長のもと、渡邉拓朗氏(神奈川県開業、包括歯科医療研究会)、井口佳大氏(熊本県開業、KDM)、富樫裕一郎氏(東京都開業、歯考会)、長瀬 崇氏(東京都開業、救歯会)らが新人発表を行った。

 次の全体会では、「超高齢社会におけるGPの役割」をテーマに、渡部 守氏(新潟県開業、無門塾)、須貝昭弘氏(神奈川県開業、火曜会)らが登壇した。渡部氏は、「超高齢社会における、GPのひとつの未来像」と題して、患者の生涯メインテナンスの重要性を述べ、それを達成するためには訪問診療が必要になっていくと話した。また、渡部氏の医院は新潟県佐渡市にあり、その経験から地域では専門分野に特化した治療よりも総合力が大切になるとともに、多職種との連携、情報共有が必要不可欠であるとした。須貝氏は、「超高齢社会に求められるかかりつけ歯科医の役割」と題して、渡部氏と同様に訪問診療の重要性を述べ、さらに特別養護老人ホームでの8年間にわたる嘱託医としての経験を語った。須貝氏はこれらの経験から、患者が要介護になる前に、その先を見据えて介護しやすい口腔内をつくることが重要であると述べた。

 午後には、2題のポスター発表後、分科会が行われた。分科会では「加齢変化を見据えたパーシャルデンチャー」「審美性を考慮した前歯部補綴処置」「根分岐部病変にどう立ち向かうか?」のテーマごとに3つに分かれ、それぞれ講演発表が行われた。

 初日、2日目の夜には「夜の部屋」として、「若手症例相談の部屋」「デジタルデンチャー秘話」、「海外ボランティアのすすめ パラオでの活動報告」が行われ、各会場にて夜中まで真剣な議論が交わされた。

 3日目の全体会「骨免疫学からみた歯周炎・咬合性外傷・骨吸収と骨形成」では、熊谷真一氏(静岡県開業、包括歯科医療研究会)、千葉英史氏(千葉県開業、火曜会)らに加えて、塚崎雅之氏(東大)を招聘して講演が行われた。まずは、熊谷氏、千葉氏らが自身の症例を供覧しながら、力と歯槽骨および骨形成に関する疑問、高齢者の歯周炎に関する疑問を挙げ、それらに対して骨免疫学の立場から塚崎氏が回答していくセッションとなっていた。塚崎氏は、「力」によって歯槽骨は吸収、増生のどちらも生じることがあるとして、骨膜に力が波及した場合は骨造成、歯槽骨に力が波及した場合は骨吸収が生じる可能性があると私見を述べた。加えて、骨形成に重要なスクレロスチン(骨細胞から分泌される糖タンパク質)の作用についても、図解とともに臨床家がわかりやすいように解説した。全体会の最後にはディスカッションが行われ、盛会のうちに幕を閉じた。

 次回の2025年 第44回臨床歯科を語る会は、斎田寛之実行委員長(埼玉県開業、火曜会)の下、東京都内で開催予定である。

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