社会|2024年11月19日掲載
全国各地から歯科技工所経営者、歯科技工士養成施設関係者などが多数参集
歯科技工「経営」未来創造フォーラム2024開催
さる11月16日(土)、ビジョンセンター新橋(東京都)において歯科技工「経営」未来創造フォーラム2024(日本歯科技工所協会主催、木村 正理事長)が開催され、全国各地から多くの歯科技工所経営者、歯科技工士養成施設関係者などが参集した。本フォーラムは、歯科技工業界が現在直面する課題を共有し、多角的な視点から物事を捉えることで各社の経営力の強化につなげ、業界全体の生産性向上と経済的評価の改善および若い世代にも魅力ある業界とすることを目的としたもの。
会場では冒頭、島 隆寛氏(日本歯科技工所協会経営理事)が趣旨説明のために登壇し、人手不足や養成機関の減少、そして経済面といった歯科技工業界をめぐる問題の本質に向き合い、活力ある歯科技工業界の実現を目指すことが本フォーラムの目的であることを多くの資料とともに提示し、その後各演者の講演に移った。以下に、各演題の概要を示す。
1)「歯科技工を取り巻く現状と課題 ~これからの歯科技工を考える~」(小嶺祐子氏、厚生労働省医政局歯科保健課長)
厚生労働省医政局歯科保健課長を務める小嶺氏は、歯科医療行政を所管する立場から、(1)歯科保健医療を取り巻く状況、(2)歯科技工の現状と最近の主な取り組み、(3)令和6年度歯科診療報酬の背景—歯科技工関係—、の3点について解説。8020運動の成果から残存歯数が増えている一方で、65歳以上の15%の人々が「噛めないものがある」としていることから今後も歯科技工の需要は変わらないこと、また「歯科技工所業務形態改善等調査に係る検証事業(日本歯科技工士会への委託事業)」「歯科技工士の業務のあり方等に関する検討会」などといった取り組み、そして令和6年度の診療報酬改定で新設された「歯科技工士連携加算」の意義などについて示した。
2)「DX活用とゲーミフィケーション経営でわくわくする歯科技工業界へ!!」(岡田大士郎氏、歯科技工士HLD Lab)
大学卒業後、およそ25年にわたり国内・海外の銀行に勤務して国際税務業務に携わった後、2005年に米国Square Enix, Incの社長(COO)として米国事業に携わり、さらに2007年からは日本のスクウェア・エニックス社に総務部長として帰任し2012年の本社スタジオの全面移転、2015年の大阪事業所の移転プロジェクトに関与した岡田氏。2018年に定年退職後、2021年にHLD Labを設立して経営アドバイザーを行っているが、本講演ではその経験から「歯科技工業界&技工士のステータスと働き方リブランディング」を提唱。(1)歯科医師からの受託的事業モデルから、患者との直接対話もしていくデンタルトランスフォーメーション、(2)歯科技工士からデンタルアート技能士、そしてDXエンジニア&データサイエンティストへ、(3)患者の人生価値をサポートするクリエイティブ・アーティスト、(4)米国をはじめとした世界市場への展開、(5)業界ステータスのリブランディング、の5点を歯科技工業界への提案とした。
3)「人を大切にする経営学」(坂本光司氏、人を大切にする経営学会)
『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズ(あさ出版)をはじめ、数十冊にわたるビジネス書を著すとともに、主宰する「人を大切にする経営学会」から「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を14回にわたって選出・授与してきた坂本氏。本講演では、その経歴から数千もの企業を取材してきた経験を基に「人を大切にする会社の条件」を多数提示。関係する人々の幸せを第一に考えブレない経営をすること、業績や企業の正調は目的ではなく、目的を実現するための手段や結果であること、企業の業績は経営環境が決めるのではなく社員のモチベーションのレベルが決定することなどについて詳説したうえで、実際の「人を大切にする会社」のエピソードを紹介。利潤の追求だけではなく、関係する人々の幸福の追求が企業経営の最大の目的であるべきことが示された。
なお、全演題終了後には木村理事長による総括が行われ、その後の懇親会も来賓挨拶や比嘉奈津美氏(参議院議員)からのビデオレター、そして業界名刺大交換会で盛会となっていた。