社会|2024年11月20日掲載

外部講師に岩崎正則氏を招聘

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催

S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会)、Webセミナーを開催

 さる11月19日(火)、S.O.N.Y-MED(福岡高齢者医療研究会、中尾 祐会長)によるWebセミナーが開催され、歯科医療関係者を中心に30名以上が参加した。

 今回は外部講師として招聘された岩崎正則氏(北海道大学大学院歯学研究院予防歯科学教室)による講演「高齢者の口腔機能と食・栄養―疫学的知見のご紹介―」が行われた。

 冒頭、岩崎氏は自身の研究領域である社会医学を挙げ、これまで歯科疫学調査によって口腔機能と食・全身(疾患)の関係について研究を行ってきた経歴が紹介された。そして、口腔保健と健康長寿に関する研究を複数供覧しながら、歯の喪失者はがんや心血管疾患、ひいては死亡リスクが上昇することを解説した。

 次に、口腔保健、生活習慣、全身疾患との関係性について言及。「FTUs」(functional tooth units)の指標を用いて、地域在住高齢者集団における5年間の食事摂取量追跡研究の結果概要を示し、米・菓子類の摂取が増え野菜の摂取が減少、その結果としてビタミン類、食物繊維などが不足していることを述べた。そして、歯の喪失や義歯の不適合をはじめとする咀嚼能力の低下は、食の多様化と栄養摂取の関係に密接にかかわっていることを強調した。

 その後は、2024年4月にリリースされた「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」のなかで新たに提唱されたOF-5(Oral frailty 5-item Checklist)にもふれつつ、口腔機能低下症が食事や栄養状態に与える研究や評価法について供覧。なかでも、栄養補助として活用されているサプリメントの是非について言及するとともに、メタ分析の結果、ほとんどのビタミンおよびミネラルのサプリメントは、栄養不良でない健康成人において心血管疾患、がん、全死亡の予防に対し、有効的なエビデンスが得られなかったことを述べ、食品から栄養をとることの重要性を説いた。

 講演後の質疑応答では、「栄養の専門化でない歯科がどこまで栄養状態についてふみ込んでいくべきなのか」という議論が展開された。議論のなかで岩崎氏は、「低栄養診断基準としてGLIM基準が用いられるのがスタンダードになりつつあるが、歯科では簡便に評価できるMNA®-SFが現実的であり、ふみ込んだ評価・管理は専門の管理栄養士と連携を図ることがベストな選択」との考えを示し、建設的な議論が展開された。

関連する特集