社会|2024年12月24日掲載

多職種の視点から子どもの見守りと情報共有を模索する

第9回日本子ども虐待防止歯科研究会学術大会開催

第9回日本子ども虐待防止歯科研究会学術大会開催

 さる12月22日(日)、歯科医師会館において、第9回日本子ども虐待防止歯科研究会学術大会(井上惠司大会長、香西克之会長)が、「多角的な視点をつないで考える 子どものWell-Being」をテーマに開催された。

 同研究会は2015年に発足し、子どもの口腔疾患を家庭環境のバロメーターの1つとしてとらえ、虐待予防を歯科領域から専門的に考えることを目的に活動している。8年ぶりに東京都での開催となった本大会では、全国から歯科医師、歯科衛生士ら約100名が参集した。

 まず、基調講演では鈴木 茂氏(こども家庭庁支援局虐待防止対策課課長補佐)が「改正児童福祉法と一時保護の現状について~一時保護施設設備運営基準と一時保護ガイドライン~」と題して登壇した。2022年の児童福祉法改正にともない、本年4月から適用された「一時保護施設の整備及び運営に関する基準」と「一時保護ガイドライン」の概要から注目すべき点として、一時保護施設での歯科医師による診察が新たに定められたことを解説した。

 続いて特別講演では、許 以寧氏(京都大学大学院総合生存学館総合生存学専攻)が「児童相談所の一時保護児における口腔内状況と虐待分類から見えてくること」と題して登壇し、統計学的視点から被虐待児の口腔疾患の傾向と虐待分類との関連性について述べた。

 シンポジウム「子どもの健康をみる、守る」では、松田博雄氏(子どもの虐待防止センター理事長)、竹内章子氏(弁護士・笠井総合法律事務所)、亀田亜佐美氏(千葉県市川児童相談所上席児童福祉司)、加藤尊巳氏(神奈川県歯科医師会常任理事)、加藤雅江氏(杏林大学保健学部健康福祉学科教授)が登壇し、歯科医療従事者が地域の多職種といかに連携し、情報共有を図るべきかについて議論した。そのなかで、歯科医師が虐待の相談や通告にハードルを感じることに対し、亀田氏は「診察で何か違和感を抱いたら、まずは地域の児童相談所へ通告してほしい。そのうえで、各児童相談所がさまざまな調査をして介入を判断する」とし、竹内氏も同じく「違和感があれば通告してもらいたい。結果的に虐待ではなかったとしても通告者情報は保護されるため、歯科医師が責任を負うことはない」と具体的な助言をした。

 最後に、第10回大会の主宰を務める新潟県歯科医師会を代表して岡田 匠氏(新潟県開業)より挨拶と案内が行われ、盛会のうちに終了した。

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