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2024年7月号掲載

(特非)日本歯周病学会の「顔」

医科への情報発信を強化し医科歯科連携の機運を高めたい

糖尿病は全身疾患のなかでも歯科と深く関連している。医科では令和6年度診療報酬改定より、従来の「特定疾患療養管理料」から新設された「生活習慣病管理料Ⅱ」の算定に移行され、より専門的・総合的な治療管理が図られる。本欄では、日本歯周病学会理事長を務め、全身疾患と歯周病の関連に造詣の深い沼部幸博氏(日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座教授)に医科歯科連携の活性化と歯科からの情報発信の重要性についてうかがった。

沼部:歯科界において、歯周病と糖尿病をはじめとする全身疾患との関連は共通認識として浸透してきたといってよいでしょう。令和6年度診療報酬改定の医科の項目において「生活習慣病に係る医学管理料の見直し」として生活習慣病管理料Ⅱが新設されました。そこで多職種との連携や糖尿病患者に対する歯科受診の推奨が要件化されたことは、医科でも歯科との連携への重要性に理解が得られてきたと捉えられ、歯科界にとって大きな前進です。

 また、日本歯科医学会(住友雅人会長)が提言していた歯科の新病名「生活習慣性歯周病」は残念ながら今回の保険収載は実現しませんでしたが、すでにその概念は組み込まれたように思われます。今後、より積極的な医科歯科連携を進めるには、さらに医科が歯科に対して興味・関心を示すような情報発信を、歯科から積極的に行うことが重要だと考えています。

 私は先日医科の学会で歯周病をキーワードとした医療連携シンポジウムに演者として招かれました。そこでは、まだまだ歯科の評価が得られていないことを肌で感じたとともに、現状に危機感を覚えました。そこで私は、日本歯周病学会からできる取り組みとして、医科に対して歯科から情報発信を行う機会を増やすべく、本会から医科の学会への演者の派遣の活性化を検討しています。制度化が整い次第、医科に演者派遣制度をアピールするとともに、ホームページなどでも積極的に情報発信を行いたいと考えています。

 昨今、医療財源のひっ迫がさけばれ、国民皆保険制度を維持していくために国は医療費の適正化を進めています。今回の歯科の改定をみても、従来の治療中心から疾病の重症化予防への評価のシフトがうかがえ、今回の医科の改定にもつうじているように思います。また、医科歯科双方の情報連携をスムーズに行うには、共通理解できる言語を用いた情報共有が重要です。歯周病においては、「炎症」がキーワードといえるでしょう。歯科で日常的に使われている基本用語も、医科が理解できなければそれは一方通行のコミュニケーションです。

 近年、国民からも全身疾患と歯周病との関連に高い関心が寄せられ、糖尿病や認知症、がんをはじめ歯周病と関連する疾患の多くの臨床・基礎研究報告があります。歯科から医科への情報発信を強化し、全身疾患と歯周病の関連に対する機運をさらに高めることは、今後の医科歯科連携の推進に向けて重要だと考えています。