2016年10月6日掲載
歯科用CAD/CAMに関心をもつ歯科技工士で盛況となる
オープンデンタルCAD/CAMセミナー2016開催
1)「CAD/CAMテクノロジーの進化と口腔内スキャナーの活用」(末瀬一彦氏、大歯大歯科審美学室)
本演題では、標題のとおりCAD/CAMテクノロジーの進化について概観。補綴装置の製作方法の歴史的変遷や、臨床だけでない教育分野でのデジタル技術の活用、またメタルフリー化が業界にとって追い風となっている点やそこで用いられる高分子材料およびセラミック材料の現状などについて述べた上で、「アナログデンティストリー」とデジタルデンティストリーの共存が重要になることを強調。いかにデジタルが進化しても、咬合や色再現などは最後まで歯科医師や歯科技工士の仕事であり、機械に使われるのではなく、人が機械を使いこなすことが今後も重要であるとした。
2)「Dental Wingsのビジョン」(Michel Divet氏、Dental Wings社Executive Vice President Sales)
このたび急遽来日したというDivet氏は、データ・デザイン社が取り扱うDental Wings社のExecutive Vice President Salesを務める人物。講演の中では、Dental Wings社の製品とサービス、また世界50ヵ国にわたるグローバルな展開や欧米における3Dプリンターの活用のされかた、CAD上の補綴物設計のみを請け負うセンターの登場など、海外事情について紹介した。また、2015年のIDSでも紹介された「DWIO」(Dental Wings社製口腔内スキャナー)、「DWLM」(同、レーザーミリングマシン)、そしてDWOS Synergy(同、インプラント埋入シミュレーションソフトウェア)についても述べた。
3)「『賢く、繋がる、進化する』、これからのデジタル歯科技工」(今田智秀氏、株式会社データ・デザイン)
今回のセミナーを主催したデータ・デザイン社のスタッフである今田氏は、同社の概要および同社のスローガンである「スマートデンタル」について紹介。さまざまなユーザーが設計した補綴装置の形態をデータベース化することで、それに類似した形態がどれだけの強度や予後をもたらすかを予測するシステムへの展望や、加工機の稼働状況を自動集計することによるワークシェアシステムへの展望など、歯科技工の安定性と再現性、生産効率の向上、そしてトレーサビリティとセキュリティの向上を目標としていることについて述べた。
4) 「The future of CAM and 5X milling machine」(中島清史氏、KNデンタルラボラトリー)
本演題では、茨城県で歯科技工所を開業する中島氏が、当初クローズドシステムを導入したもののその限界にぶつかり、オープンシステムによる補綴装置の自由な設計・製作を志してその実現に至るまでについて紹介。クローズドシステムでは「何が本当で、何が嘘なのかがわからなかった」とした上で、ミリングマシンの構造とその限界について知ること、エンドミルの形態や規格について知ること、そしてCAMソフトウェアの意義とツールパスが補綴装置の仕上がりにいかに影響をもたらすか、などについて述べた。また、その成果として30mm厚のジルコニアディスクを特注した上で製作したデンチャーフレームワークや、PEKK材料を用いたフルデンチャーの実例を示した。
5)「進化型デンタルCAD/CAMシステムの動向と可能性」(渡邊健一氏、株式会社データ・デザイン)
前出の今田氏と同じくデータ・デザイン社のスタッフである渡邊氏は、同社で取り扱うソフトウェアの新機能について紹介。Dental Wings社製品はもちろん、CAMソフトウェアのWorkNC Dental(Sescoi)のバージョンごとの機能の進化について述べた。また、CAMソフトウェアを使用する上で必要になる工具の選定や加工条件のマッチングについての概要や、新素材(PEEKディスクや模型製作用の石膏ディスクなど)への対応について示した。