学会|2024年12月10日掲載
「歯科審美の守破離 ―革新と進化―」をテーマに
第35回日本歯科審美学会学術大会が開催
さる12月7日(土)、8日(日)の両日、あわぎんホール(徳島県)において、第35回日本歯科審美学会学術大会(保坂啓一大会長、山本一世理事長)が「歯科審美の守破離 ―革新と進化―」をテーマに開催された。歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士らが500名以上参加し盛会となった。
「守・破・離」とは、千利休が茶道で提唱したとされる概念であり、まずは教えられた基本的な技術や知識を「守る」こと、次に基本を超え独自の方法を模索する、すなわち「破る」こと、そして最終的に真の独自性を追求して「離れる」こと、この3つの段階を示すという。ほとんどのプログラムは、この「守破離」がテーマに含まれ、歯科審美の各種領域における「守破離」について講演が行われた。
アドバンストセミナー1「保存治療の守破離」として、座長の宮崎真至氏 (日本大学歯学部保存学教室修復学講座)のもと3題の講演が行われ、田代浩史氏(静岡県開業)が「口腔内状況に合わせたコンポジットレジン修復の有効活用― 適応症拡大のために必要な基本「守」への回帰 ―」と題し講演した。
次に、菅原佳広氏 (新潟県開業)が「コンポジットレジン修復における上達への道」と題し講演。さらに、畑山貴志氏 (東京科学大学う蝕制御学分野)が「モノブロックダイレクトクラウン―未来のCR修復への挑戦―」と題し講演した。講演の後には座長の宮崎氏より各演者に診療に必要不可欠なツールや材料についての問いかけがあり、三者三様の回答がなされた。
続いて、アドバンストセミナー2「ホワイトニング治療の守破離」 として、座長の大槻昌幸氏 (東京科学大学大学院う蝕制御学分野)のもと、辻本暁正氏(愛知学院大学歯学部保存修復学講座)が「新時代の医療ホワイトニング―ホームホワイトニングから変える心美治療戦略―」と題し講演した。医療ホワイトニング技術の歴史やシステマティックレビューの解説を行い、大学独自の取り組みを紹介したほか、症例を供覧した。
次に、藤原奈津美氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔保健医療管理学分野)が「ホワイトニング治療で求められる歯科衛生士とは―最新の歯科衛生士教育をふまえて―」と題し講演。自身の海外留学を含めた歯科衛生士としてのキャリアアップや、普段の臨床で疑問があれば率先して調べることで幅が広がること、少なくとも統計をとり数値化すると見えてくることがあると強調した。
最後に、松永興昌氏 (福岡県開業)が「患者と歯牙の特徴から行うホワイトニングの実践」として、臨床における患者とのかかわり方や、特に一般に知られるようになった今、ホワイトニングを行う際に気をつけるべきポイントを講演した。
理事長講演では、座長として大会長の保坂氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部再生歯科治療学分野)のもと、山本氏(大阪歯科大学歯学部歯科保存学講座)が「これからの歯科審美学が目指すもの―人生100年時代に向けての“守破離”―」と題し、「守破離」にのっとり、う蝕を中心に社会や患者の傾向の変化とともに歯科医療を取り巻く情勢を解説し、学会として歯科審美学の今後の展望を述べた。
また、他学会との共催講演や、韓国の歯科審美学会からの招待講演など工夫の凝らされたプログラムに、各会場を活発に行き交う姿が見られ、盛会裏に幕を閉じた。
なお、次回第36回日本歯科審美学会学術大会は、きたる2025年12月13日(土)、14日(日)の両日、パシフィコ横浜ノース(神奈川県)において、小川 匠大会長(鶴見大学歯学部クラウンブリッジ補綴学)のもと開催予定である。