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社会|2024年12月17日掲載

全国各地から約130名が参集し、義歯の歴史と未来を学ぶ

「神奈川歯科大学OBが語る 次世代へ繋ぐ! 義歯治療 歴史を背負う者たち」開催

「神奈川歯科大学OBが語る 次世代へ繋ぐ! 義歯治療 歴史を背負う者たち」開催

 さる12月15日(日)、神奈川歯科大学附属横浜クリニック・横浜研修センター(神奈川県)において、「神奈川歯科大学OBが語る 次世代へ繋ぐ! 義歯治療 歴史を背負う者たち」(株式会社フルールドリス主催、前畑 香代表)が開催され、全国各地から130名あまりが参集した。本講演会は、神奈川歯科大学31回生の前畑氏の主導のもと、同学3回生の村岡秀明氏(千葉県開業)から41回生の北條幹武氏(東京都開業)までの、義歯治療の分野で活躍する歯科医師10名を講師に招聘し行われたもの。以下に、演題と演者および概要を示す(講演順)。

1)「コピーデンチャーを活用した下顎難症例への対応」村岡秀明氏(千葉県開業、3回生)
 専用フラスコを用いたコピーデンチャーの製作およびその調整法や、「総義歯の形」を知ることの重要性、なかでも頬棚部やレトロモラーパッドの活用や義歯を左右対称型に製作することの意味などについて示された。

2)「義歯作製に必要な臨床解剖」松尾雅斗氏(神奈川歯科大学大学院口腔科学講座、13回生)
 昨今常識となったCT画像だけでは得られない解剖的な知識、特に軟組織の形態と総義歯の関係について詳説。総義歯が装着された献体の図示をはじめ、各組織の位置関係や厚みなど、実際の解剖からでしか得られない知識が多数示された。

3)「義歯機能時に合わせた総義歯印象 2回法印象(概形印象)~ティッシュコン機能印象」前畑氏(神奈川県開業)
 「どのような方法をとるにしても、概形印象は術者が意図する個人トレーや基礎床を製作するために必要な解剖学的ランドマークを含むものでなければならない」というコンセプトのもと、演者の概形印象の工程を詳説。有歯顎用トレーを用いた2回法の解説に続き、ティッシュコンディショナーによるダイナミック印象およびその材料選択、また咬座印象も併用した臨床例についても示された。

4)「若手だからこそ考える失敗の少ない総義歯印象 概形印象~シリコン印象」北條氏
 「経験値に依存しない印象法を伝える」ことをキーワードに、概形印象と精密印象について解説。概形印象ではシリンジを用いてアルジネート印象材を注入した上でトレーを圧接するテクニックなどが、また精密印象に関しては個人トレーの形態設定法、また各社のシリコン印象材の物性の比較などが示された。

5)「口腔機能とその適応形態に基づく義歯設計」神山 敬氏(熊本県開業、34回生)
 金属床義歯を製作したが発音や食渣の粘膜面への流入に悩まされた症例、本症例をふまえて口蓋部の厚みを変化させられることを意図したレジン床義歯を製作した症例、および咬合力が強い患者に対して金属床の利点を活かして義歯を製作した症例の3症例を提示。これらの症例供覧をとおして、超高齢社会においては個々の患者の口腔機能に合わせた義歯設計が重要になることを示した。

6)「歯あわせ創造科の塩田メソッド・軟化パラフィンワックス臼歯咬合法の全て 師匠と共に」土屋公義氏(東京都開業、24回生)
 本年4月に逝去された塩田博文氏(神奈川歯科大学11回生)を師と仰ぐ土屋氏が、塩田氏が用いていたスライドも交えつつ登壇。「軟化パラフィンワックス臼歯咬合法」による不調義歯のリマウント法や、義歯新製時への応用、そして「本法でなければ義歯を入れられなかった」という難症例への対応などを提示された。

7)「噛めない義歯を蘇らせるリマウント調整の極意」西田哲也氏(宮崎県開業、35回生)
 河原英雄氏(前歯でも噛める入れ歯研究会)によるリマウント調整法について解説。使用中の義歯に対してバランスドオクルージョンを付与するための方法や、本法により噛める喜びを取り戻した患者の動画が多数供覧された。

8)「連結人工歯を用いた咬合採得から臨床で見えたこと」渡辺宣孝氏(神奈川県開業、6回生)
 「歯科医学は咬合学である」ことをキーワードに、下顎を基準に咬合面を設定すること、また咬合平面は第2頚椎歯突起に向かい、第2頚椎歯突起が生理的下顎運動の中心点となるという理論を展開。また、フルアーチ連結人工歯による生理的咬合採得法についても示された。  

9)「3Dプリント義歯の道のりと現在、そして今後のDXに向けて」玉置勝司氏(神奈川歯科大学短期大学部歯科衛生学科、13回生)
 本演題では、1)総義歯歯列弓アーチの数値化、2)総義歯人工歯のイノベーション、3)3Dプリント義歯製作システムの開発、4)3Dプリント総義歯によるさらなるデジタル義歯のイノベーション――4パートに分けて解説。前演者の渡辺氏の講演を受け、フルアーチ人工歯開発の経緯やその根拠、また3Dプリントされた義歯床にフルアーチ人工歯を接着するシステムのメリットなどについて示した。また、このように技術が進化しても、日常臨床における義歯治療では患者とのコミュニケーション、信頼関係の構築がきわめて重要であることを強調した。

10)「私の総義歯製作法と人間学」中村順三氏(北海道開業、4回生)
 1973年に神奈川歯科大学を卒業後、保母須弥也氏(故人・元奥羽大学学長)や阿部晴彦氏(宮城県開業)をはじめとする歯科界の巨人たちから学んできた演者が、その経験を基に実践した総義歯の再治療症例を供覧。また、「人間学について」も多数のスライドを用いて示し、医療や健康に携わる者は、本来技術よりも心を磨くべきであるとした。

 演者らの卒業年次には約40年の幅があり、それぞれのアプローチもさまざまでありながら、各演者がそれぞれの道筋で患者のためになる義歯づくりを追求しつづけている姿勢が感じられる、きわめて印象的な講演会となっていた。

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