社会|2024年12月17日掲載
患者の長期にわたる健康と幸福に寄与する矯正歯科治療を目指して
矯正歯科長期安定研究会(LTSOA)第2回学術大会 TOKYO 2024開催
さる12月15日(日)、富士ソフトアキバプラザ(東京都)において矯正歯科長期安定研究会(LTSOA)第2回学術大会 TOKYO 2024(橋場千織大会長、本吉 満会長)が開催され、267名が参集した。本研究会は、デジタル技術の革新にともない大きく変化を迎えている現在においても矯正歯科治療の役割は変わらず、審美的・機能的に良好で長期安定する治療結果の獲得により患者の長期にわたる健康と幸福に寄与することであるとして、種々の研究会やテクニックの壁を越え、責任ある矯正歯科治療のための研鑽に努めることを目的としている。
本大会では、教育講演および特別講演が各1題、そして4題の会員講演、症例展示コーナーが準備された。
そのうち、筒井照子氏(福岡県開業)による会員講演「開業して49年、長期症例から学ぶ」では、患者の転居などで断続的ではあるが1980年代から長期にわたり経過を見続けてきた症例を供覧しながら、初診時とはまた別の問題が、加齢とともに、あるいは担当医の成熟とともに生まれてくることを示した。みずからも実感することとして「生きていくことは壊れていくこと」であり、その一例として顎関節症患者の下顎頭の変化を追いながら崩れていくバランスにどのように手を携え整えるのかについて提言した。
また本吉氏(日本大学教授)による教育講演「長期安定に関与する要因を考える―舌位や咬合平面など」、末石研二氏(東京歯科大学客員教授)による特別講演「矯正治療結果の長期安定性と保定に関する文献考察」と大学人による講演が行われた。ここでは、それぞれ自身の歯科矯正学講座におけるCBCT画像の計測項目を利用した研究に基づく長期安定を考慮した矯正歯科治療の注意点、およびLee W. Graberの「Orthodontics Current Principles and Techniques」をはじめ、先人たちの膨大な文献から矯正歯科治療後の長期安定性について考察した。筋肉および線維、そしてエラスティックなどの補助装置が、歯のみならず周囲の構造のバランスに与える影響が少なくないことから、矯正歯科治療で考慮すべきメカニクスの注意点や治療計画で憂慮すべき知見が共有された。
症例展示は参加者の投票によって優秀賞が決定され、保定開始後5~10年症例からは高柳譲司氏(東京都開業)の「著しいoverjet、overbiteを伴う狭窄歯列のAngle II級low angle症例」、10~20年症例からは立花京子氏(兵庫県開業)の「Alexander Disciplineの原則に基づく成人反対咬合の長期安定症例」、20年以上症例からは浅井保彦氏(岐阜県開業)の「Angle I級叢生、非抜歯症例、治療後39年経過」がそれぞれ選出された。各氏は2025年12月21日(日)に同会場で開催される第3回学術大会にて今回供覧した症例について講演する。
また、本研究会の次期会長には須田直人氏(明海大学教授)が就任する予定であることが発表された。