大学|2025年2月12日掲載

須田立雄名誉教授が「医歯二元論から出発した我が国の歯科医学の課題」と題し記念講演

東京科学大学口腔科学センター、キックオフミーティングを開催

東京科学大学口腔科学センター、キックオフミーティングを開催

 さる2月11日(火)、東京科学大学鈴木章夫記念講堂(東京都)において、東京科学大学口腔科学センター(森山啓司センター長)によるキックオフミーティングが開催され、一般来場者を含めて約150名が会場に参集した。

 森山氏による開会の辞の後、田中雄二郎氏(東京科学大学学長)、大竹尚登氏(同大学理事長)による挨拶が行われた。挨拶の中で田中氏は、2024年10月より東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、東京科学大学(Science Tokyo)として新たにスタートしたことにふれ、東京科学大学の科学の進歩と人々の幸せの理念を共有し、「統合によって実現できる新たな挑戦や研究をつうじて世界の人々の幸せに貢献したい」との想いを述べた。大竹氏は、口腔科学センター設立にあたり医・歯・理工学連携を活かした新たな研究分野創出への期待とともに、基礎研究から社会実装につなげるまでのビジョン、そして「分野の垣根を超えた開かれたセンターとして国内外へ新たな価値を発信していきたい」と「開放系」としてのあり方を説明した。

 次に、柳澤好治氏(文部科学省大学研究基盤整備課長)による来賓祝辞がビデオ配信され、続けて、古川哲史氏(東京科学大学執行役副理事)による口腔科学センター設立趣旨の説明、依田哲也氏(同大学歯学部長)による歯学部長挨拶が行われた。古川氏は、歯学研究の大きなブレイクスルーのためには医療系・理工系の研究者が共同研究できる場が必要であることを強調。そして、「依田氏からは以前より口腔科学センターの設立について強い要望を受けており、医工学連携をつうじたブレイクスルーを起こすには今回の大学統合が大きなチャンス」と同センター設立にあたり文部科学省に概算要求を提出するに至ったいきさつが述べられた。

 その後は、森山氏より口腔科学センターの概要や展望が説明された。森山氏は日本の歯科需要の変遷とともに口腔から全身の健康を目指す機運や口腔と全身の連関研究の重要性の高まりについて述べ、「口腔科学における研究・開発、そして人材育成をつうじたトータルヘルスケアへの貢献を目指す」との目的のもと2024年4月に同センターが創設された経緯が説明された。また、片桐さやか氏(口腔科学センター口腔全身健康部門部門長)、猪越正直氏(同口腔デバイス・マテリアル部門部門長)より自身の部門の人員構成や協力研究者、企業連携について説明がなされ、多様な人材で構成されていることやさらなる展開がアピールされた。

 式典後、依田氏、渡部徹郎氏(東京科学大学病態生科学分野教授)が座長を務め、記念講演として須田立雄氏(昭和大学名誉教授)が「医歯二元論から出発した我が国の歯科医学の課題」と題して登壇。須田氏は冒頭、自身の経歴とともに歯科医師になってから研究に没頭し続けた約60年を回顧。そして医歯二元論について、「医学の中のいち診療科としての歯科(一元論)では十分な需要を満たすだけの歯科医療提供や高い専門性への対応に難航したのではないか」と医歯二元論で発展してきた歴史を考察した。

 その後は、中林宣男氏(元東京医科歯科大学教授)の歯科用接着剤4-METAの発明、故・ブローネマルク氏の歯科用インプラント技術の基礎をつくり上げた発見など、歯科界の発展に大きな功績をもたらした研究ならびに自身のビタミンDの代謝研究を紹介した。そして最後は、「東京科学大学からノーベル化学賞・医学賞の受賞者が輩出されることを期待しています」と講演を締めくくった。

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