2021年4月号掲載
国民のための歯科専門医制度の確立を目指す
歯科専門医制度はだれのためのものなのか――。中立性と公平性を有する組織として2018年4月に設立された(一社)日本歯科専門医機構。本欄では、2020年6月に理事長に就任した今井 裕氏(獨協医科大学名誉教授)に歯科専門医制度の進捗状況および今後の展開についてうかがった。
今井:日本歯科専門医機構(以下、当機構)は、歯科医療の基盤となる歯科専門医制度の確立を目指し、歯科専門医の質の担保と良質かつ適切な歯科医療を提供することを目的としています。当機構は、登録された歯科専門医および各学会の専門医制度を継続的に管理・監督するとともに、継続的に質の向上を求めるためにそれらを支援することが役割です。
2019年8月から機構認証の歯科専門医のための認証審査の受け付けを開始しました。2019年9月と11月には、社員である各学会と患者団体の代表が一堂に会して、国民が必要とする新たな歯科専門医を創生することを目的としたワークショップを2回開催し、歯科の基本領域の専門医名称について検討しました。
しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染症の影響により、当機構の業務を一時停止せざるを得ないなど事業が遅滞しました。そのなかで、現在歯科専門医として広告可能な5学会(日本口腔外科学会、日本歯周病学会、日本小児歯科学会、日本歯科麻酔学会、日本歯科放射線学会)における「歯科専門医制度運用審査」の認証については、2020年6月に認証した日本歯科麻酔学会(認証済)を除く4学会も2020年10月に認証しました。また、歯科保存、補綴歯科、矯正歯科、インプラント歯科ならびに総合歯科診療(いずれも仮称)のあり方に関しては、今年夏までに制度認証のためのフレームワークづくりを実現するために急ピッチで進めています。そして可能であれば2022年度中にはさらなる質の担保のための研修プログラムの整備や、共通研修に関する統一見解を取りまとめ、そのプラットフォームを構築して認証作業に入る予定です。
特に、超高齢社会を迎えた日本において、基礎疾患や障害を有するハイリスク患者をはじめ認知症患者や摂食障害の高齢者の対応、地域包括ケアシステムや多職種連携の推進など、新しく歯科に求められるニーズが年々増えています。
したがって「総合歯科診療専門医(仮称)」については、前述した社会の変化に対応可能な歯科専門医の養成を図るとともに、日本歯科医師会と協議・連携しながら社会が求める歯科専門医を認定したいと考えています。そのためには、歯学教育、国家試験、臨床研修から生涯研修といった一貫した生涯教育システムとして、機構だけでなく多方面から歯学教育そのもののあり方を検討することが求められています。
次世代に責任を果たす歯科専門医が国民から信頼されるために、当機構が歯科界全体の進むべき方向性や専門医のあるべき姿を示せるよう会務に取り組んでいきたいと思います。