関連キーワード

2020年3月号掲載

時代を見据えた歯科医師養成の実現へ

 日本歯科医師会(以下、日歯)は「卒前卒後のシームレスな歯科医師養成のための提言」を、加藤厚生労働大臣と萩生田文部科学大臣へ提出した。歯科医師を目指す学生にとってきわめて重要な診療参加型臨床実習は、患者の承諾の下、指導医が適切な症例を選びながら実施されている。しかし、大学間で差異はあるものの、以前と比べ円滑な実施が困難な状況にある。提言では、その是正のため共用試験(CBT・OSCE)を現在よりも公的な位置づけとし、Student Dentistとして歯学生が行う歯科医行為を法的に担保することを求めている。またその背景には、歯科医師国家試験合格率の低迷などから、現状の歯学教育が座学偏重、国家試験対策偏重であるとの懸念がある。そのために臨床実習が疎かになるようでは、バランスを欠くことは自明の理である。

 一方で今回の提言は、歯学教育から国家試験とその後の臨床研修、さらに生涯教育まですぐれた歯科医師を養成するための教育や研修について、一貫性の確立を問うものである。そのためには省庁間の壁を低くし、膝を交えて大局的な協議を行う場の設置が必要である。

 そのうえにおいても、日歯および都道府県歯科医師会が運営する「生涯研修制度」の果たすべき役割は大きい。2年単位で見直しを重ね、研修システムとコンテンツのさらなる充実を図りながら、歯科ニーズの多様化に応え、地域歯科医療を担う全国の日歯会員のかかりつけ医機能を高めるため、今後も学術面でサポートしていく。