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2024年6月号掲載

迫りくる歯科医師不足時代への対応策

※本記事は、「新聞クイント 2024年6月号」より抜粋して掲載。

 歯科医院数に続き、歯科医師数も減少局面に入った。歯科医師の高齢化と現状の国家試験合格者数から見れば無理からぬ現象である。歯科に限らず後継者不足とDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の困難さがこれに拍車をかける。とりわけ人口減少が早く進む地域では、歯科の新規参入や再開が見込めない一方で、効果的な事業承継対策や働き方改革は容易でない。特に高齢歯科医師にとって、最近の複雑な診療報酬改定や迫りくる電子カルテの導入などは、リタイヤを決意する要因ともなろう。

 ただし、これらは歯科医療者側の問題意識である。より深刻なのは、必要な歯科治療が受けられない患者の健康被害の蔓延である。各都道府県のホームページ上には2次医療圏ごとの人口対比歯科医師数が公表されていて、地域格差を含めどこが過剰傾向か不足傾向かは概ね推測できるため、より詳細な状況分析と現実的な対策が重要である。

 共通しているのは訪問歯科診療の担い手不足や、後方支援の病院歯科医師あるいは市区町村や保健所勤務の歯科医師、歯科衛生士の不足であろう。いずれにせよ歯科の需要と供給を定量的に検証し、国と都道府県の責任の下に対策を講ずることが急務である。

 加えて歯科医師不足は、地域の歯科医師会と自治体、保険者らが連携して実施する歯科保健事業の運営を直撃しかねない。自治体などとの協議の下に実施方法の見直しを図ることや、歯科医師会をコンパクトな事業体とするような工夫が必要ではないか。