2019年12月15日掲載

「有床義歯成功の秘訣~パーシャルからフルデンチャーまで~」をテーマに

第4回有床義歯学会学術大会開催

第4回有床義歯学会学術大会開催
 さる12月15日(日)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター(東京都)において、第4回有床義歯学会学術大会(有床義歯学会〔Japan Plate Denture Association、以下JPDA〕主催、亀田行雄会長)が開催された。本大会は、2016年4月にスタディグループ「JDA〔Japan Denture Association〕」から改組のうえ発足したJPDAにとって4回目となる学術大会。会場には全国、そしてアジア各地から200名あまりが参集。今回は、有床義歯学会として初のパーシャルデンチャーについて取り上げた学術大会として注目を集めていた。以下に、演者・演題とその概要を示す。

1)「パーシャルデンチャー成功のKey Point」(松本勝利氏、福島県開業)
 本演題では、今後到来することが見込まれている「2025年問題」(団塊世代が2025年ごろまでに後期高齢者となることにより、医療費などの急増が懸念される問題)に向けてパーシャルデンチャーが求められることを示したうえで、そのための印象採得、咬合の付与、パーシャルデンチャーの設計、そしてマウスプレパレーションの4つのポイントについて主に解説。「義歯製作における問題点をすべて洗い出し、ひとつずつ解消していけば成功が得られる」「治療の過程は因数分解」をキーワードに、それぞれの過程で起こりうるエラーとその解決策について示した。

2)「残存組織の保全を考慮した部分床義歯の設計」(遊亀裕一氏、歯科技工士・山手デンタルアート)
 本演題では、かねてから生体情報を基にした歯科技工をテーマに講演・執筆多数の遊亀氏が、特にパーシャルデンチャーの製作において必要な歯科医師とのコミュニケーションや得ておきたい情報、そしてパーシャルデンチャーの構成要素などについて解説。石膏模型だけを見て機能するパーシャルデンチャーを製作することは不可能であるという見地から、エックス線写真や歯周組織検査表などを活用した臨床例について、これまでかかわってきた歯科医師のエピソードを多数交えながら示した。

3)「全部床義歯臨床、歴史から学ぶ多くの知見」(松田謙一氏、大阪府開業)
 本演題では、Carl O. Boucherらによって1940年に著され、現在でも筆頭著者を代えながら第13版に至っている無歯顎補綴の代表的な教科書『Prosthodontics Treatment for Edentulous Patients』(日本国内では『バウチャー 無歯顎患者の補綴治療 原著第12版』〔医歯薬出版、2008年〕)を基に、(1)全部床義歯臨床の歴史、(2)印象方法の変遷、(3)顎間関係の決定法/確認法の変遷、(4)人工歯の形態と変遷、そして(5)義歯に付与する咬合の変遷、のそれぞれについて詳説。義歯を構成する各要素には絶対的な正解はないが、「十分なエビデンスがないからという理由で、先人の豊富な臨床経験から得られて言葉に耳を傾けないのはもったいない」「われわれは先人たちの遺したさまざまな知識から学び、よりよい無歯顎補綴治療を行えるよう努力すべき」と結んだ。

4)「中国における下顎総義歯の吸着とデジタルデンチャー」(孙 俊良氏、中国開業)
 本演題の前半では、孙氏が阿部二郎氏(東京都開業、有床義歯学会名誉会長)の著書『下颌吸附性义齿和BPS临床指南』(原著タイトル『下顎吸着義歯とBPSパーフェクトマニュアル』〔クインテッセンス出版、2011年〕)にふれて下顎総義歯吸着テクニックを知って以来、同書を見ながら独力で下顎総義歯の吸着を可能にした症例や、実際に同テクニックを学ぶべく来日して阿部氏の指導を受けたエピソード、またさる2018年には有床義歯学会指導医資格を取得したことなどを報告した。また後半では、中国におけるデジタル総義歯製作システム「3DCF星」(上海星公司)の紹介が行われ、下顎総義歯吸着テクニックによる印象採得を採り入れたデジタル総義歯製作システムとして注目を集めた。

 この他、会場では「e-ポスター」(紙のポスターではなく、液晶ディスプレイにポスターの内容を表示させて展示するもの)6題によるポスターセッションも併せて行われ、盛況となっていた。なお、第5回学術大会はきたる2020年12月に開催予定とのこと。

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