2021年10月17日掲載
天野敦雄教授を招聘し、好評を博す
日本臨床歯科学会東京支部、Webハイジニストミーティングを開催
天野氏は冒頭で「う蝕や歯周病は常在菌による感染症であるため、完治しない」と述べ、だからこそ、歯科衛生士が主体となってバイオフィルムの管理を行うこと、患者にも主治医となってもらうように導くことが重要であると強調した。そのうえで、う蝕・歯周病の病因論の理解に不可欠であるマイクロバイアルシフト(バイオフィルムの高病原化)について解説した。
病因論については、最新の知見をもとにさらに掘り下げる天野氏。まず、う蝕については原因菌がミュータンス菌だけではなくなっていること、う蝕の誘発成分もショ糖だけでなく、ブドウ糖や果糖、でんぷんなどを含めた発酵性糖質とされていることを紹介。それゆえに、う蝕予防においてはブラッシング指導以上に、食事指導やフッ化物応用が欠かせないとした。また、昨今特に高齢者において増加している根面う蝕が歯冠う蝕よりもリスクが高い理由について、象牙質とエナメル質の構造の違いなどをふまえて説明した。
歯周病については、発症の最大のカギとなる原因菌であるP.gingivalisを軸に、歯周ポケットからの出血によってマイクロバイアルシフトが起こることなどを詳説し、歯周病治療の目標は出血を止めることとまとめた。また、歯科衛生士によるSRPやブラッシング指導、信頼が生まれる患者指導についても多数のポイントを提示した。
講演後には質疑応答の機会が設けられ、講演内容や臨床上での疑問などをふまえて寄せられた質問に天野氏が1つひとつていねいに回答。終始明快かつ軽快な語り口で、参加者にとってはあっという間の4時間であった。