学会|2024年10月21日掲載

「フォトバイオモジュレーションが拓く未来」をテーマに

第36回日本レーザー歯学会総会・学術大会が開催

第36回日本レーザー歯学会総会・学術大会が開催

 さる10月19日(土)、20日(日)の両日、愛知学院大学楠元キャンパス(愛知県)において、第36回日本レーザー歯学会総会・学術大会(前田初彦大会長、横瀬敏志理事長)が開催され、歯科医師、歯科衛生士ら約258名が参加し、盛会となった。

 初日に開催された理事長講演「レーザー歯科治療におけるガイドラインについて」では、日本レーザー歯学会理事長の横瀬氏(明海大歯学部機能保存回復学講座保存治療学分野)が学会としてのガイドライン作成の経緯と背景を述べた。レーザー歯科治療は専門性が高く、多機能の機器が開発され、幅広い処置が可能となった。保険収載もされたが、学会としてのガイドラインがないため、科学的根拠に基づいた安全管理の判断基準がなく、学会員をはじめとして以前から要望があったという。現在、五味一博氏(鶴見大名誉教授)を委員長として進行中である旨を述べ、レーザー歯科治療の信頼性の向上に期待を寄せた。

 その後は、ガイドライン作成委員長として五味氏がガイドライン作成における詳細と進捗を報告した。まずは現在認可済のものから適正な治療指針を提示し、治療効果を評価し、臨床医、患者、施策者(行政)の3方向での活用を考慮しているという。CQ(Clinical Question)の策定のため、論文の選定とリスト作成、論文の構造化と抄録作成まで進み、引き続き5つのCQワークショップに向けて進めていると報告した。

 続いて、シンポジウムI「光線力学療法の最前線:バイオフィルム抑制から顎骨壊死まで」と題して、座長の片桐さやか氏(東京科学大大学院医歯学総合研究科口腔生命医科学分野)と三谷 章雄氏(愛院大歯学部歯周病学講座)のもと、以下3名が最新研究について講演した。

 まず、福田光男氏(愛院大歯学部歯周病学講座)より「歯周ポケット内バイオフィルム抑制を目的とした新規抗菌光線力学療法システムについて」と題してレーザーの波長と感受性物質であるインドシアニングリーンの組み合わせにより、効率よく抗菌効果が得られるとし、溶液の場合と複数の化合物を用いてナノ粒子化した場合の効果や安全性などの研究が報告された。

 次に、森川雅己氏(松本歯科大歯科保存学講座〔歯内〕)が「レスベラトロールを用いた光線力学療法による根管治療への応用」と題して講演した。歯科用レーザーと赤色素・青色素とレスベラトロールを組み合わせた根管治療で有意な効果があるとし、適切な光感受性物質の組み合わせは効果が高いと報告した。レスベラトロールは多くの食物に含まれ、細胞活性化の効能があるという。

 最後に、下平 剛氏(東京科学大歯周病学分野)より、「Photobiomodulationを応用したMRONJ新規予防策の開発〜LLLTにBreakthroughは起こりうるのか?〜」と題して近赤外線レーザー(Lumix 2)を使用したLLLTにより、MRONJの確実性の高い予防法を目指す研究が報告された。レーザーの低侵襲な治療と、治癒の促進、骨代謝促進といった効果はMRONJの予防につながりうるとした。

 ランチョンセミナーでは協賛企業の株式会社モリタより本年6月に発売された、注目の新機種「アドベールSH」について、吉嶺真一郎氏(鹿児島県開業)より講演が行われた。

 吉嶺氏は以前からレーザー機器を日常臨床で活用しているという。発売から間もないため、症例こそ少数だが、長年レーザーを愛用してきた同氏の実感をもってポイントが語られた。大きな特長として「高出力化」、「高パルス化」、「2種のパルス波」を挙げ、国産の機器安定と国際的な性能の両方を兼ね備えているとした。機器パネルは直感的な操作がしやすいうえ、2つのプリセットモード(ソフト/ハード)、自動で推奨チップが表示されるなど、初心者にも適切な設定が容易であると操作性の高さを述べた。また、実際の歯周外科手術の動画も供覧し、レーザー治療は各波形の特長を頭に入れて使うことが重要であるとした。企業展示ではその他各種レーザー機器メーカーが出展し、盛況であった。

 その他、大会長講演ではレーザー歯科治療の宇宙での活用の動きが語られ、シンポジウムIIでは、矯正分野での活用研究も紹介された。歯科医師以外の講師による教育講演、特別講演もあり、基礎と臨床、他分野から幅広く歯科用レーザーを知る充実したプログラムに、質疑も多く寄せられ、関心の強さがうかがえた。最後に認定講習会、安全講習会が行われ、盛会裏に幕を閉じた。

 なお、次回第37回日本レーザー歯学会総会・学術大会は、きたる2025年11月29日(土)、30日(日)の両日、東京科学大学鈴木章夫記念講堂(東京都)において、島田康史大会長(東京科学大大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野)のもと開催予定である。

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