学会|2024年11月6日掲載
「国民から信頼される口腔インプラント治療」をテーマに5,100名超を集めて盛会となる
(公社)日本口腔インプラント学会、第54回学術大会を開催
さる11月1日(金)から3日(日)の3日間、国立京都国際会館(京都府)において、第54回公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会(日本口腔インプラント学会第44回近畿・北陸支部学術大会併催/阪本貴司大会長、細川隆司理事長)が「国民から信頼される口腔インプラント治療―人生100年時代を見据えた口腔機能の維持回復―」をテーマに開催され、5,100名を超える歯科医療従事者が参集した。
今大会では特別講演、シンポジウム、教育講座、施設セッション・ランチョンセミナーなどの各種セミナー、一般口演、ポスター発表などプログラムが多岐にわたり、展示ブースも含め終日盛況となった。以下に一部のシンポジウムを抜粋して報告する。
シンポジウム2「インプラント治療における原因不明の疼痛、違和感、歯科心身疾患を考える」では、西郷慶悦氏(岩手県開業)、草野 薫氏(大歯大)の座長のもと、宗像源博氏(昭和大歯学部インプラント歯科学講座)、安彦善裕氏(北海道医療大教授)、豊福 明氏(東京科学大大学院医歯学総合研究科歯科心身医学分野教授)が登壇。宗像氏は独特な審美性や咬み合わせに執着する患者とその対応について解説し、特にインプラントを含む補綴治療や矯正歯科治療において、歯科治療そのものは目的ではなく手段であることを認識して、治療介入すべきかどうか判断すべきとまとめた。安彦氏は歯科心身症の定義を説き、インプラント埋入と関連することが多い主な症状として、舌痛症(口腔的熱症候群)、非定型歯痛(インプラント埋入後疼痛)、咬合違和感症、口腔異常感症を挙げ、インプラント埋入により歯科心身症状が出現したら、原則的には除去せずに心身医学的アプローチをしたほうがよいと話した。豊福氏は、自身の経験した歯科心身症患者のタイプ別に解説した一方、トラブルを防ぐためには処方薬の確認も重要であるとした。
シンポジウム9「抜歯前からのインプラント治療の戦略」では、廣安一彦氏(日歯大新潟病院口腔インプラント科)、園山 亘氏(岡山大大学院)を座長として、飯田吉郎氏(愛知県開業)、増田英人氏、小田師巳氏(ともに大阪府開業)が登壇。飯田氏は、抜歯窩へのSST(Socket Shield Technique)を応用した即時埋入と、SSTをAlveolar Ridge Preservationへ応用した待時埋入の手法を中心に解説し、前歯部インプラントの治療戦略を提案した。増田氏は審美領域の抜歯即時埋入の治療法について説明し、唇側軟組織の退縮を起こさせないための重要なポイントとして、フラップレス、インプラントの三次元的ポジション、骨補填材の充填、結合組織移植の併用と即時プロビジョナルレストレーションを挙げた。小田氏は大規模な骨造成を回避するためのリッジプリザベーションの術式を紹介し、抜歯後のインプラント埋入に少しでも不安を感じたらリッジプリザベーションの検討をしてほしいと話した。
シンポジウム10「インプラント周囲炎に対する治療戦略」では、和田義行氏(北海道開業)、正木千尋氏(九歯大)の座長のもと、大月基弘氏(大阪府開業)、今 一裕氏(岩手医科大)、石川知弘氏(静岡県開業)が登壇。大月氏はインプラント周囲疾患に関する基本的知識を説き、インプラント周囲炎を今以上に確実に治療するためには治療法のさらなる検証が必要であるとした。今氏は、エマージェンスプロファイルをはじめとした補綴装置に関連する要件、インプラント周囲炎との関連性とその考え方について解説し、エマージェンスアングルは30°以下として形態修正の検討を促した。石川氏はインプラント周囲炎に対する再建的な外科的治療を行った症例を供覧し、重要なポイントとして、インプラント周囲炎への早期の対応、外科治療の前には感染と炎症のコントロールを行うこと、欠損形態によって治療ゴールを設定すること、インプラント撤去後は組織の治癒を待ったのち再建、術後メインテナンスを徹底することなどを挙げた。
各セッション後の質疑応答では多数の質問が寄せられ、盛会裏に終了した。なお、次回学術大会は、きたる2025年10月24日(金)から26日(日)の3日間、福岡国際会議場(福岡県)において、細川隆司大会長のもと開催予定。