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学会|2024年11月28日掲載

歯科ビジョンの実現とイノベーションの実装に向け研究者が参集

第40回歯科医学を中心とした総合的な研究を推進する集い(令和6年度)開催

第40回歯科医学を中心とした総合的な研究を推進する集い(令和6年度)開催

 さる11月27日(水)、歯科医師会館において、日本歯科医学会(住友雅人会長)による第40回歯科医学を中心とした総合的な研究を推進する集い(令和6年度)が開催された。

 本会は、「学際的交流をとおし、新しい研究分野の開拓と研究組織の結成を推進すること、また臨学一体の具現化」を目的にジャンルを超えた研究者が集い、発表・意見交換の場とするものである。

 小林隆太郎氏(日本歯科医学会副会長)の開会の言葉の後、住友氏より主催者挨拶が行われた。住友氏は、会長就任以来本集いに約10年間かかわり続けてきたなかで、本集いが研究意欲を高めるものとして、これまでを回顧した。続けて、末瀨一彦氏(同学会常任理事)より経過報告のなかで開催目的の補足や期待、優秀発表賞の評価基準などが述べられた。その後はさまざまな領域の大学研究者を中心とした7題の発表とディスカッション、さらに同演題、同演者らによるポスターディスカッションが行われた。

 午前の部では芳賀秀郷氏(昭和大学歯学部歯科矯正学)による「超音波診断装置は口腔機能の定量的評価に応用可能か?―口腔機能発達不全症・オーラルフレイルの評価指標への挑戦―」、森川貴迪氏(みつわ台総合病院歯科口腔外科)による「蛍光観察による口腔がんのスクリーニング」、財津 崇氏(東京科学大学大学院医歯学総合研究科歯科公衆衛生学分野)による「XAI(説明可能 AI)技術を活用した次世代口腔リスク診断システムの開発」、星野照秀氏(東京歯科大学口腔病態外科学)による「漢方薬は『オーラル・フレイル』の予防に貢献できるか」の4講演が行われた。

 なかでも森川氏は、日本では口腔がん患者が年々増加傾向にあり世界の口腔がん患者と比較しても死亡率が高い現状を共有し、早期発見・治療のためのスクリーニングの重要性を強調。そこで、侵襲のない手法として画像処理ソフト「ImageJ」を用いた蛍光観察により他覚的かつ定量的な評価を可能としたことを述べ、本研究の有用性を披露した。また星野氏は、「オーラルフレイルのチェック項目にむせや口腔乾燥が示されたことを受け、漢方薬を用いたむせや口腔乾燥の改善がオーラルフレイルの予防にも寄与するのではないか」との仮説からメタボローム解析に着手した研究概要を解説。人参養栄湯(漢方薬)を投与したモデルマウス群との比較から、体重増加や歩行時間・スピードの改善、握力の向上が確認された研究結果を示し、オーラルフレイル予防をつうじた老年歯科医学への貢献に期待を寄せた。

 午後の部では、出分菜々衣氏(松本歯科大学歯科保存学)による「軽度認知障害患者の唾液中口腔細菌叢およびタンパクを標的としたスクリーニング法の開発および歯周病治療による認知機能低下予防の検討」、中西 康氏(北海道大学大学院歯学研究院生体材料工学)による「高齢者の口腔感染症の防止と介護者の負担軽減に資するCPC徐放・リチャージ義歯の開発」、大島正充氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部顎機能咬合再建学)による「天然歯と同等の歯周組織構造を有する次世代バイオインプラントの開発」の3講演が行われた。

 なかでも中西氏は、義歯汚染が誤嚥性肺炎や口腔カンジダ症、またさまざまなウイルス感染に密接な関係があることを述べた。あわせて介護施設のひっ迫した状況にも言及し、介護者の負担を減らし毎日の義歯洗浄を簡便にすることの意義を説くとともに、リチャージ可能な殺菌性義歯の開発研究・実績を報告した。

 他の講演でもAIによる診断や定量的評価・未病の段階でのスクリーニングといった今後強化の望まれるテーマが選出されていた。質疑応答では、研究発表者に対して関連領域との連携や社会実装に向けた今後の展望など、積極的な意見交換が交わされ、盛会となった。

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