社会|2024年12月10日掲載

「今こそ知りたいパーシャルデンチャー」をテーマに

第9回有床義歯学会学術大会が開催

第9回有床義歯学会学術大会が開催

 さる12月8日(日)、秋葉原コンベンションホール(東京都)において第9回有床義歯学会学術大会(有床義歯学会主催、山崎史晃会長)が開催され、約250名が参集した。これまで主に総義歯を扱ってきた有床義歯学会学術大会であったが、第9回目の学術大会となる今回は、パーシャルデンチャーをテーマに開催されることとなった。

 最初に「『欠損補綴』の設計に必要な『欠損歯列』の読み方」と題して講演を行った飯田雄太氏(岡山県開業)は、臨床において欠損歯列を「スピード(歯の生涯図)」「レベル(宮地の咬合三角)」「パターン(cummerの分類と欠損ダイヤ)」の3つの視点から評価することで「上減の歯列」の傾向があるのかを判断し、診断に活かしていると述べた。

 「キャストパーシャルデンチャーのデザイン・・・装着感の良いデザインと永続性への探求」と題して講演を行った中野進也氏(歯科技工士、ジョイクリエイト)は、川島 哲氏(歯科技工士、ユニデント)が提唱するT.K三角理論を含めたキャストパーシャルのデザイン、メタルフレームの適合、長期使用にともなう修理も考慮したパーシャルデンチャーの製作について解説した。

 午前中の最後には、「部分床義歯において個人トレーは必須か?」と題して山崎氏(富山県開業)と亀遊宏直氏(歯科技工士、キユウ・デンタルスタジオ)が登壇。山崎氏はシリコーン印象と寒天アルジネート印象の比較や、既製トレーと個人トレーの比較などを行いながら、粘膜面の加圧印象を行うためには個人トレーとシリコーン印象が必要だと結論付けた。それを受けて亀遊氏は、個人トレーを製作する際のポイントについてていねいに解説した。

 ランチョンセミナーを挟んで午後からは、伊井博樹氏(埼玉県開業)による「口腔内スキャナーを用いたコピーデンチャーの製作法」、三宅宏之氏(宮城県開業)による「知っておきたいチェアサイドでのリマウントテクニック」、佐野和也氏(歯科技工士、サヤカ)による「少しの手間で大きな効果、リカンタリングジグ製作法」、佐藤大介氏(歯科技工士、シンワ歯研)による「3Dプリントコピーデンチャーにおけるカラーリングの基本」の4題のテーブルクリニックが同時進行で行われ、参加者はそれぞれ自分が聴講したいテーブルの周囲を囲み、演者の話を真剣に聞き入っていた。

 その後は、「オルタードキャスト法でRPDの適合を極める」と題して亀田行雄氏(埼玉県開業)と野澤康二氏(歯科技工士、シンワ歯研)が登壇。亀田氏は、下顎の遊離端欠損症例に対して有効だといわれている、残存歯部と粘膜部の被圧偏位量のズレを調整する手法であるオルタードキャスト法を成功させるためのポイントを解説した。それを受けて野澤氏は、従来法とIOSを併用した場合のオルタードキャスト法の技工操作についてそれぞれ解説した。

 「デジタル技術とパーシャルデンチャー:効率と精度を追求する新たなアプローチ」と題して講演を行った今田裕也氏(歯科技工士、協和デンタルラボラトリー)は、現時点におけるデジタルデンチャーについて協和デンタルラボラトリーでの取り組みを例に挙げながら、歯科技工士不足なども考慮して、患者と歯科医師の満足のためにデジタルをうまく活用することが重要であると述べた。

 「ジルコニアクラウン&パーシャルデンチャーによる全顎補綴を成功させる製作手順」と題して講演を行った関口寛之氏(埼玉県開業)と須藤哲也氏(歯科技工士、Defy)は、重度歯周病で少数歯残存となった70代男性に対して行ったモノリシックジルコニアサベイドクラウンと上下顎パーシャルデンチャーのケースについて、初診から最終補綴装置装着まで時系列に沿ってそれぞれがどのように考えて臨床を行っていったのかを解説した。

  講演終了後は、演者への質疑応答が行われた。その後、会場内で展示・投票が行われていた歯科技工士6名が参加したデンチャーカラーリングコンテストの表彰式(優勝者は福中景一朗氏〔歯科技工士、大福ギシ製作所〕)、同会の名誉会長である阿部二郎氏(東京都開業)による総括が行われ閉会となった。

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