社会|2025年2月18日掲載

「多職種連携による新しい歯科医療体制の発進を目指して」をテーマに

第10回国際歯科医療安全機構総会・学術大会開催

第10回国際歯科医療安全機構総会・学術大会開催

 さる2月16日(日)、一般社団法人国際歯科医療安全機構第10回総会・学術大会(安部貴大大会長、瀬戸●(かん)一[●は日へんに完]理事長)が、神奈川歯科大学(神奈川県)を会場に現地およびWeb配信のハイブリッド形式にて開催された。

 最初に招聘講演として、厚生労働省保険局の和田康志氏が「近年の診療報酬改定のトレンドと目指す方向性」と題して、近年診療報酬改定において日本が抱えるさまざまな課題への対応が行われてきている動向を解説。歯科については、少子超高齢化の進展やう蝕患者の減少などにともない、歯の形態回復をめざした治療中心型から、口腔機能の維持・回復を重視する治療・管理・連携型に推移するとの将来予想のもとに、口腔機能の取り組みに対する評価の充実、周術期や回復期などにおける口腔機能管理の導入、医科診療報酬上での歯科との連携を評価する点数の設定など、最近の改定における具体的な対応を解説。いずれも多職種が、それぞれの専門性を理解し尊重したうえでチームで取り組むことが重要と述べ、今後の改定においてもよりいっそう連携による取り組みを評価・推進させていくとの方向性を示した。

 次に特別講演として、井野 智氏と槻木恵一氏(ともに神奈川歯科大学教授)が登壇。井野氏は「『栄養摂取』と『美味しい』を守る歯科保健に向けて」と題し、補綴による口腔機能回復だけでなく、食事の内容まで考慮した改善が重要との認識のもと、その具体的な対応としてカルテを通じた医科との情報共有など、医科併設の歯科病院における多職種連携の取り組みなどを紹介した。槻木氏は、「口腔から始まる全身の健康革命 -唾液が拓く歯科医療の新たな可能性-」と題し、「口腔の健康が全身の健康につながる」ことが解明されつつあるなかで、「唾液」がその中心的な役割を果たすと説明。唾液検査により口腔の内部環境に注目してアプローチをすることで、歯科が生体機能の回復に貢献する予防医療として国民的価値を創造できると強調し、歯科医療の新たな可能性について言及した。

 続いて教育講演として、今後も増加が見込まれる訪問歯科診療をテーマに、森本佳成氏(神奈川歯科大学教授)と石井宏昭氏(聖マリアンナ医科大学 川崎市立多摩病院参与)から、症例報告やアンケート調査などを交えながら、多職種連携の重要性や全身管理、偶発症などのリスクに対応するスキル習得の必要性が述べられた。

 最後に、歯科衛生士・歯科技工士のキャリア形成をテーマとしたコデンタルセミナーが行われ、歯科衛生士の松田悠平氏(島根大学講師)と歯科技工士の萩原圭子氏(メディカルラボK)が講演。松田氏は、現場臨床および臨床疫学の研究者、教育者としての自身の経験を交えながら、歯科医師と連携・協働しつつ、異なる専門性をもつ歯科衛生士としての役割や可能性について述べた。萩原氏は、エピテーゼソマトプロテーゼを製作するラボを開業し、自身の業務を通じて、患者さん個々のニーズに寄り添いながら身体の欠損を補い、外見を回復することでQOL向上を支援していく、その意義ややりがいを語った。

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