学会|2025年4月11日掲載

「成人矯正歯科治療」をテーマに

2025年東京矯正歯科学会春季セミナー開催

2025年東京矯正歯科学会春季セミナー開催

 さる4月10日(木)、有楽町朝日ホール(東京都)において、2025年東京矯正歯科学会春季セミナー(西井 康会長)が「成人矯正歯科治療」をテーマに開催された。今回のセミナーでは小野卓史氏(同学会学術委員長、東京科学大学)がモデレーターを務め、歯科矯正用アンカースクリューの世界的権威であるイ・ギジュン氏(韓国・延世大学校教授)が招聘された。

 イ氏は「Expanding the scope of adult orthodontics: How to save tooth and bone in critical situation(成人矯正治療の適用範囲を拡大する:危機的状況で歯と骨を保存する方法)」と題して、「Part I. How to save bone: Latest trends in adults MARPE: Gender- and age- specific strategies(Part I:骨を守る方法:成人患者用MARPEの最新情報 性別および年齢別の戦略)」「Part II. How to save tooth: Orthodontic intervention for periodontally compromised cases(Part II:歯を守る方法:歯周病患者に対する歯科矯正的介入)」の2パートで講演を行った。

 患者からの要望の増加や、口腔の健康が全身の健康に及ぼす影響が知られるようになったことから、成人矯正治療の重要性がますます注目されている。その一方で、一般に成人の歯列弓拡大は困難とされており、これまで外科的支援による口蓋急速拡大法(SARPE)が広く用いられてきた。氏は本講演Part Iにて、成人矯正治療における外科的侵襲を回避する歯科矯正用アンカースクリューを利用した急速拡大装置(MARPE)について実証研究を行い、多くの研究および臨床に影響を与えた立場から、MARPEに関する自身の研究結果の解説および最新知見、口蓋正中縫合の生物学的特性に基づいたMARPEの利用プロトコールを共有した。

 Part IIでは、歯周疾患を有しうる中高年患者を対象として、加齢にともなう不正歯列の発生や咬合崩壊の危険性に対応するために行う矯正歯科治療について講演した。ここで氏は、日々の矯正歯科治療においてバイオメカニクスおよび抵抗中心を考慮することの重要性を強調し、TADの植立位置について解説した。また治療では歯周組織を守るために咬合性外傷の発生を絶対に避け、アーチワイヤーを用いた部分矯正や歯の圧下をうまく利用することをポイントとして述べた。

 昨今注目されている急速拡大装置、および包括的歯科治療における矯正歯科治療についての内容であるだけに、会場からは質問が多く寄せられ、教育者でもある氏が特に若い聴衆に向けて熱心な問いかけや解説を行う充実した場となった

関連する特集