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2024年5月号掲載

中医協委員を務める日本歯科医師会副会長

会員に不利益が生じないようにわかりやすい周知活動に努めたい

 令和6年度診療報酬改定の点数答申が発出されて以降、日本歯科医師会は積極的に情報発信を行ってきた。しかし、本改定は「特例的な対応としての対象職種のベースアップ評価料」をはじめ、従来とは異なる部分も多い内容となり、「難解な改定」という会員の声も多く挙がっている。そこで本欄では、中央社会保険医療協議会委員を務める林 正純氏(日歯副会長)にあたらめて本改定の要点をうかがった。

林:日本歯科医師会(以下、日歯)は、「かかりつけ歯科医の診療所がう蝕や歯周病を筆頭に疾病の重症化予防を担い、国民の口腔の健康から全身の健康を支える」というメッセージを発信してきました。近年、う蝕や歯周病、欠損が減少傾向にある疾病構造の変化を受け、従来の治療中心型から口腔機能の維持・回復が目的の口腔機能管理を行う歯科医療へ転換しつつあります。

 こうした歯科ニーズの変遷に対して、診療報酬上の評価もニーズに適した内容にすべく、本改定では小児口腔機能管理料と口腔機能管理料への加算(ともに50点)、口腔機能の獲得や機能回復・維持を目的とした指導訓練として、歯科口腔リハビリテーション料3が新設されました。これにより、ライフコースに応じた包括的歯科臨床への評価が手厚くなりました。

 また、多くの先生方が注目しているかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の廃止にともない、入れ替わる形で口腔管理体制強化加算(口管強)が新設されました。本制度は「か強診」の概念を踏襲しつつ、名称もふくめて国民が理解しやすい制度としてあらためています。施設基準を見直すとともに、う蝕や歯周病の重症化予防に対する評価として、根面う蝕管理料とエナメル質初期う蝕管理料(ともに30点)が新設されました。

 加えて、医科歯科連携のさらなる推進に向け、歯周病の増悪因子となる糖尿病患者に対する歯科処置および情報連携に対する評価として、歯周病ハイリスク患者加算と診療情報等連携共有料2が新設されました。特に、医科では生活習慣病管理料の見直しとして多職種との連携や、糖尿病患者に対する歯科受診の推奨が要件とされたことは大きな一歩です。

 なお、医療安全・感染対策における評価として歯科外来診療環境体制加算(外来環)と入れ替わる形で新設された歯科外来診療医療安全対策加算(外安全)、歯科外来診療感染対策加算(外感染)(ともに12点)、そして医療DX推進に関する加算など、改定趣意を理解いただければプラスになる改定だと考えています。他にも、歯科技工士連携加算1、2とともにCAD/CAMインレー修復に対する光学印象の新設は、歯科界に風穴をあけることができました。

 いずれにせよ、本改定が会員の先生方のみならず歯科技工士と歯科衛生士も含めた歯科界にとって不利益が生じることがないように、日歯はていねいな周知活動に努めるとともに、国民皆歯科健診制度の実現や歯科の適切な評価に向けて、今後も要望を続ける所存です。