2024年12月号掲載
私と付き合うことになった彼の名は。
※本記事は、「新聞クイント 2024年12月号」より抜粋して掲載。
彼とは今夏、尊敬するU歯科医師の紹介で出会った。U先生によれば、彼と上手に付き合えれば私は理想に近づくことができる。ただし、1日の多くの時間を一緒に過ごす必要があり、ある程度お金がかかる。また場合によっては、追加のお金が必要となることもあるそうだ。先生から「紹介することはできるが、ご家族とよく相談してください」との提案を受け、私は診療所を後にした。
日本臨床矯正歯科医会によれば、同会への彼に関するトラブル相談が、2019年には21件であったのに対して、2021年には83件にまで増加しているという。前述のU先生のように、トラブル防止のためには矯正歯科治療の結果が、患者さんの使用状況・方法に大きく依存すること、追加費用や返金の基準・条件などの事項についても事前説明が重要である。仮に裁判になった場合、説明同意書のサインは必ずしも説明責任を果たした証明にはならない。即日のサインで治療に進んでいる場合、「患者から同意を得られていない」と判断されてしまう可能性もある。説明同意書は、いったん持ち帰ってもらった方がよい場合もあるだろう。
患者さんとの認識のずれはクレームにつながりやすい。日々の診療のなかで「今の説明でご不明点はありませんか」といったような質問しやすい環境づくりが、トラブル予防策と感じている。
熟慮の末、私は彼と付き合うことを決めた。前歯の並びがきれいになる未来を思うと、毎日がウキウキである。彼の名は、アライナー(マウスピース矯正)である。