2021年11月13日掲載
「経過観察と個別対応〜明日の臨床と患者との未来を築くために〜」をテーマに
スタディグループ火曜会、65周年記念講演会を開催
火曜会は、金子一芳氏(歯科医師)が中心となり1955年に結成したスタディグループ。以降65年間、患者の特徴・問題点を“ひと・くち・は”という3つの視点で捉え、症例の流れを読み、「個別対応」を心がけ、行った処置の妥当性を「経過観察」によって評価し、次に活かしていくというスタンスのもと活動を続けている。
本講演会は2日間にわたり、全4部のプログラムで構成された。まず初日は、実行委員長の斎田寛之氏(埼玉県開業)が開会挨拶にて登壇し、本講演会にかける熱い想いを語り開幕。その後、第1部「経過から考える補綴臨床」が行われた。演題、演者を以下に示す。
「欠損歯列のみかた〜KA367から見えること〜」中舘正芳氏(静岡県開業)
「ペリオとテレスコープ」金子一芳氏
「咬合支持の回復に努めた1症例」中村一寿氏(2022年神奈川県開業予定)
「顎位低下への対応に悩んだ1症例」村埜啓真氏(静岡県勤務)
「欠損歯列における犬歯の重要性」設楽幸治氏(東京都開業)
「前後的偏在症例からの考察」若松尚吾氏(東京都開業)
「重度左右的すれ違い症例から学んだこと」西島 泉氏(東京都開業)
「経過からみたすれ違い症例への対応」筒井純也氏(東京都開業)
いずれの演者も、金子氏が考案した、複雑な欠損歯列を読み解き最適な補綴設計を考えるためのサポートツールである「KA367」を用いながら、補綴臨床における個別対応の実際を症例とともに解説した。
2日目の第2部は「患者の個体差を診る歯周病治療」をテーマに行われた。演題、演者を以下に示す。
「患者一人ひとりに最適な歯周治療をめざして」千葉英史氏(千葉県開業)
「歯周病の治りやすさと補綴処置」鷹岡竜一氏(東京都開業)
「重度歯周病罹患歯の保存に努めた一例」今村亮祐氏(長野県開業)
「重度歯周病患者への対応から学んだこと」鎌田征之氏(東京都開業)
「私の考える再生療法の出番」斎田寛之氏(埼玉県開業)
2日目のトップバッターとなった千葉氏は、初診からの平均経過年数約30年の8症例を披露し、時間とともに変化する患者の個体としての特徴を捉えることの重要性を説き、その後に講演する演者らへバトンをつないだ。
つづく第3部は「歯根膜移動が拡げる明日の臨床」をテーマに、歯牙移植・歯牙移動に関する発表が行われた。演題、演者を以下に示す。
「長期症例から考える歯牙移植の要点」甲田和行氏(東京都開業)
「歯牙移植による咬合支持の獲得」林 直也氏(東京都開業)
「歯牙移動でフレアアウトを改善した症例」江尻健一郎氏(東京都開業)
「上顎埋伏智歯の活用法」中村輝夫氏(神奈川県開業)
「歯根膜移動の多角的臨床活用」松井宏榮氏(神奈川県開業)
松井氏は、歯牙移植・歯牙移動を歯根膜移動として捉え、さまざま症例での活用を披露しながら、第3部のまとめとして、各手法の成功要因をまとめ、歯根膜移動活用の威力について発表した。
最後の第4部では、「人の成長発育と高齢化にあわせた歯科医療」をテーマに、須貝昭弘氏(神奈川県開業)が同題の講演を行った。氏は、歯科の特徴として「1人の患者と永くかかわる」ことを挙げ、主に学齢期までに診察を受けた子どもたちのきれいな永久歯列の獲得の方法と各症例の経過観察や、通院できなくなった高齢の患者に対してどのようなアプローチをしたらよいかなどを解説した。
最後に、筒井氏が閉会の辞に立ち、熱気に包まれたまま本講演会は閉幕した。“じみな臨床をじみちに”をモットーに、“個別対応”“経過観察”を重視する火曜会のフィロソフィーが確実に次世代に継承されていることが伝わってきた2日間であった。なお、本講演会は、11月14日(日)~12月5日(日)までの間、振り返り視聴が可能となっている(要参加登録・有料。詳細はこちらから)。