学会|2024年7月22日掲載
「人生100年の健口を共に考える チームで寄り添う包括歯科臨床」をテーマに
第12回日本包括歯科臨床学会学術大会・総会開催
さる7月20日(土)、21日(日)の両日、神戸国際会議場(兵庫県)において、第12回日本包括歯科臨床学会学術大会・総会(倉田 豊会長、延藤秀樹大会長)が、「人生100年の健口を共に考える チームで寄り添う包括歯科臨床」をテーマに開催された。
本会では、特別講演4題、出版決定記念講演2題、台湾歯列再生研究学会との交流講演、会員発表12題、技工士セッション6題、コデンタルセッション8題、ポスター発表9題が行われた。内容としては、コンポジットレジン修復から再生治療、包括歯科臨床におけるリスクマネジメント、歯周治療における新しい診断と治療戦略、チーム歯科医療、メインテナンス、口腔機能管理、医療面接、薬剤投与を中心とした口腔外科の術前術後管理、長期安定性を鑑みた矯正歯科治療やアライナー矯正治療など、多岐にわたった。
そのうち、月星光博氏(愛知県開業)による「包括的歯科医療と歯科の正義」では、まず1982年の開業から間もない時期に治療した症例をはじめとして、自身がこれまで取り組んできた歯周治療および自家歯牙移植について、当時の歯周病学の教育環境やPrichard JFやRamford SPといったさまざまな先人による歯周病学的知見を示しつつ振り返った。またライフワークとなっている自家歯牙移植についても、膨大な数に及ぶ治療の経験から、成功あるいは失敗する傾向、そしてアンキローシスを起こしたあとはどのような経過をたどるか、外傷と歯周病の骨の喪失の違いなどについて述べた。後半は、いかにこれまでの歯科学のドグマを排除し、目の前の病態を診断・治療していくのかについて語られた。CBCT画像やX線写真に写る黒い影が何に由来するのか、それへの適切な対処やその時期は何か、さまざまな可能性と生体の治癒力を考慮し、かつ高度な技術を駆使することが歯科医師に求められるとし、「診断の正義、そして技術の正義が必要」と締めくくった。
また、槇 宏太郎氏(昭和大特任教授)が「アライナー矯正の現状と課題」と題して登壇し、生体力学的な解析および矯正診断の必要性、アライナー矯正治療における3Dシミュレーションの問題点、デジタル歯科の今後という3点について語った。氏は講演のなかで、歯科にもデジタル機器が普及しているが、形態的なものに終始しており、力学的で数値に示されるような技術が必要と強調した。また消費者庁や日本矯正歯科学会へのクレームが急増しているというアライナー矯正治療について、歯科医師の診断技術の不足、説明不足があると問題提起し、アライナー矯正治療を扱う歯科医師は、診断法、アライナーの特性、原因の推定と迅速な対応法・リカバリー法を学ぶべきとした。