社会|2024年7月22日掲載

「命を守るオーラルケア ~いざという時のために、今、できること~」をテーマに

第29回口腔保健シンポジウム開催

第29回口腔保健シンポジウム開催

 さる7月20日(土)、第29回口腔保健シンポジウム(日本歯科医師会主催、サンスター株式会社協賛)が、Web配信にて開催された。本シンポジウムは、1994年に開催された世界口腔保健学術大会における「口腔保健に関する東京宣言」を契機として毎年開催されているものであり、今年度は「命を守るオーラルケア ~いざという時のために、今、できること~」のテーマで開催された。

 冒頭、高橋英登氏(日本歯科医師会会長)より本会の開催概要と社会に対する歯科の役割や期待が述べられた。なかでも6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太の方針2024)」についてふれ、オーラルフレイル対策や疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、といった文言が国の重要課題に挙げられていることを強調し、今後とも日本歯科医師会として「国民が人生の最期まで自分の歯で美味しく食べる」を支えるため邁進する旨がアピールされた。

 次に、小林隆太郎氏(日歯大東京短期大学学長)による基調講演、「『口腔健康管理』のチカラ―生きる 食べる 話す を考える―」が行われた。まず、小林氏は1)口腔機能管理、2)口腔衛生管理、3)口腔ケア――からなる口腔健康管理の概念図と歯科治療の需要の将来予想図を供覧。歯科職を中心とした1)と2)の口腔機能の維持・回復まで含めたプロフェッショナルケアそして、3)による患者さんのセルフケアの概念について解説した。あわせて、治療中心型の歯科医療から各ライフステージに応じたライフコースとしての口腔健康管理へのシフトが進み、「歯」の治療のみならず「口腔から全身の健康サポート」への役割についても言及した。

 続いて、足立了平氏(医療法人社団関田会ときわ病院歯科口腔外科部長)による特別講演、「『日常から非日常の準備をする』ことの重要性」が行われた。足立氏は、災害死において災害の発生が直接的な死因ではない「関連死」の調査結果を示し、肺炎の発生が多いことおよび高齢者の割合が高いことを説明した。そして、自身が体験した阪神淡路大震災時の経験も交えながら、「災害時は、極端な水不足による口腔ケアの控えやストレスのかかる避難所生活の環境によるさまざまな要因が複合的に誤嚥性肺炎を助長してしまう」ことを強調した。そして、平時からの災害に強い口づくりの重要性を訴えかけた。

 その後は、足立氏に加えて、司会の長野智子氏(キャスター・ジャーナリスト)そしてサンスター財団所属の歯科衛生士、神戸学院大学に所属する地域などで防災の啓発活動を行う集団「防災女子」によるトークセッション「命を守るお口の健康のために、毎日できる口腔ケアと非日常への備え」が行われ、災害時にポリ袋で作れる簡単レシピや水がごく少量しか確保できない際の口腔ケアが紹介された。

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