社会|2024年9月25日掲載

「デジタル矯正 可能性の追求」をテーマに

第3回日本デジタル矯正歯科学会、学術大会・総会開催

第3回日本デジタル矯正歯科学会、学術大会・総会開催

 さる9月22日(日)、JP TOWER Hall & Conference Tokyo(東京都)において、第3回日本デジタル矯正歯科学会(林 一夫大会長、三林栄吾理事長)が、「デジタル矯正 可能性の追求」をテーマに開催された。本会は現地開催とWeb配信のハイブリット形式で行われ、合わせて450名を集め、盛会となった。

 午前のセッションでは、山﨑長郎氏(東京都開業)が「Interdisciplinary Management of Ortho - Restrative Patient」、根岸慎一氏(日大松戸歯学部教授)が「口腔機能が顔面軟組織および歯列形態の成長変化に及ぼす影響―口腔機能のデジタル診断の臨床応用への展望―」と題して講演した。そのうち根岸氏は、現在取り組んでいるデジタルデバイスを活用した音声バイオマーカーの研究を紹介し、「将来的には小児の睡眠時無呼吸の鑑別に役立てたい」と述べた。

 午後のセッションでは、岡藤範正氏(松本歯科大教授)による「アライナー矯正装置と機能的マウスピース矯正装置の可能性」、井上敬介氏(愛知県開業)による「デジタル技術を駆使した小児予防矯正と気道発育の重要性」、月星陽介氏(愛知県勤務)による「フリーソフトで広がるデジタル矯正歯科の可能性」、杉元敬弘氏(京都府開業)による「補綴処置を前提とした個別化(カスタムメイド)矯正歯科治療の診断・設計と咬合―矯正治療と補綴治療における理想的な歯列の共通点と相違点を考える―」、平岡孝文氏(東京都開業)による「Additive Manufacturing in Orthodontics の可能性」が行われた。ここでは、アナログとデジタルの融合、デジタル技術と予防歯科、新しいソフトウェアやマテリアルの活用などの視点でデジタル矯正歯科治療の現在地と展望が語られた。

 また、特別講演として韓国デジタル矯正歯科学会、日本デジタル歯科学会との共催セッションが行われ、前者では同会会長のGye Hyeong Lee氏と教育ディレクターのDanal Moon氏が登壇し、「3D digital technology for better function」と題して、矯正歯科治療前の患者に対する顎関節の安定化を図るための治療として、スタビライゼーションスプリントの治療コンセプトと作製のデジタルワークフローを解説した。後者では、中村さゆり氏(東京都開業)が招聘され、「歯科用口腔内スキャナーの臨床応用と3Dデジタルフルカスタムメイド型リンガルブラケット矯正装置のワークフロー」と題し、国内歯科医院でのIOS導入の現状や自院での活用例と矯正歯科治療での応用、さらに赤外線を使用したOCT(光干渉断層撮影)技術が今後歯科領域で導入・実用化される可能性を紹介し、将来IOSにOCTが搭載されれば、歯の表面だけでなく内部も非接触・非侵襲で撮影できるようになることを示唆した。

 各セッション後の質疑応答の時間では、矯正歯科治療、補綴治療、小児の予防医療、口腔機能、咬合、Airwayと分野をまたいで、デジタル技術の進展による次世代の歯科治療について活発な意見交換がなされ、盛会裏に終了した。なお、オンデマンド配信の視聴期間は2024年10月1日(火)から31日(木)である。

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