社会|2024年10月11日掲載
中川洋一氏が「舌痛症の本質と新しい治療アプローチ」をテーマにWeb講演
クインテッセンス出版株式会社、第60回WEBINARを開催
さる10月10日(木)、中川洋一氏(新横浜歯科衛生士・歯科技工士専門学校学校長)によるWEBINAR #60「舌痛症の本質と新しい治療アプローチ」(クインテッセンス出版主催、北峯康充代表取締役社長)が開催された。本セミナーは、中川氏の著書『チェアサイド・介護で役立つ 口腔難治性疾患アトラス』の内容をベースに行われた。
同書は舌痛症、口腔乾燥症、味覚異常、口臭症への対処を取り上げているが、本セミナーは、臨床家が特に対応に悩むことの多い舌痛症をメインに行われた。
舌痛症(口腔灼熱痛症候群:BMS)は、その原因の不確かさから、メンタルの問題とされやすい。だが、30年あまりの氏の臨床経験からいうと、メンタルへの対処ではなく、「痛み神経への対処」が奏効することが多いと説明した。
舌痛症の本質は、侵害受容性疼痛――舌の侵害受容器からの痛みである。痛みはいくつもの神経を経て脳内で知覚されるが、「痛みを抑制する神経」が正常に働いていないと、ふつうなら認識されないレベルの刺激すら痛みに感じてしまう。
そうした"痛みの過剰な伝達"を抑制するために、氏は薬物療法を行っている。氏の第一選択薬はロフラゼプ酸エチル(ベンゾジアゼピン系抗不安薬の1種)であるが、それを例に、まず痛みがどのように知覚されるかを、神経伝達物質の動きや受容体の反応を含めて解説。そして、そのシナプス経路にロフラゼプ酸エチルがどのように作用して、痛みの伝達を抑えるかを詳述した。
従来、歯科では薬物療法は軽視されがちだが、舌痛症のような、医科での対処が難しい口の中の症状については、歯科での薬物療法が重要であると締めくくった。
講演後の質疑応答では、「舌痛症と、うつ病による身体症状との鑑別のしかた」「舌痛症に対する薬剤の選択順位や適応症」などについて、会場から疑問が寄せられた。
なお、本Webセミナーの振り返り配信は、2025年1月10日まで購入が可能である。次回のWEBINAR #61は、きたる11月7日(木)、大河雅之氏(東京都開業)を招聘し、「ラミネートベニアのクラシフィケーション ~前歯部と臼歯部~」が開催予定である。申込みはこちらから。