学会|2024年10月21日掲載

「医科疾患に対して歯科医療はどのように対応していくのか? 改めて確認する医科歯科連携」をテーマに

日本有病者歯科医療学会第14回学術教育セミナー開催

日本有病者歯科医療学会第14回学術教育セミナー開催

 さる10月20日(日)、AP日本橋(東京都)において、一般社団法人日本有病者歯科医療学会第14回学術教育セミナー(坂下英明理事長)が「医科疾患に対して歯科医療はどのように対応していくのか? 改めて確認する医科歯科連携」をテーマに現地およびWeb配信のハイブリッド形式にて開催され、参加申し込み500名以上、会場には約40名が参集した。

 冒頭、坂下理事長と矢郷 香氏(日本有病者歯科医療学会学術研修委員会委員長)の挨拶が行われた後、午前の部では、循環器疾患をテーマとした講演が行われ、田村雄一氏(国際医療福祉大医学部循環器内科学教授)による講演「歯科治療を受ける患者さんに合併する循環器疾患の管理の実際」、城戸幹太氏(北大大学院歯学研究院口腔病態学分野歯科麻酔学教室教授)による講演「循環器疾患を有する患者の歯科治療上の注意事項と緊急時対応」の2題が行われた。

 田村氏は、高齢化にともなう心血管疾患の合併症を有する患者さんの増加について言及し、日本で介護が必要となった患者さんの約2割が循環器系疾患によるものと説明した。そして、動脈硬化によって血管が弾力を失い、高血圧によって血管壁にストレスがかかる悪循環が脳梗塞や心筋梗塞の大きな要因になることや、循環器疾患に使用頻度の高い治療薬とその選択について解説した。城戸氏は、歯科治療に起因するものと思われる死因に、心不全や脳血管障害などの合併症が多いことに言及した。循環器疾患患者の歯科治療においては継続的なモニタリングの必要性を強調するとともに、重症患者においては循環器内科主治医と連携し、リスク評価に応じて術前の休薬も含めたリスク管理を行う重要性を共有した。

 午後の部では、感染症のテーマとして、関谷紀貴氏(東京科学大大学院医歯学総合研究科感染症健康危機管理学分野特任准教授)による講演「平時の感染症診療と感染症危機管理」、野口一馬氏(兵庫医科大医学部歯科口腔外科学講座臨床教授)による講演「口腔感染症の外科・薬物療法について~MRONJ治療への対応~」が行われた。関谷氏は、病院内で頻度の高い感染症と繰り返す感染症の歴史について述べた後、抗菌薬の適正使用を評価するAWaRe分類を紹介するとともに、過剰使用・誤使用を見直すことや標準予防策の中心とした感染対策の重要性を訴えた。

 血液疾患のテーマとして、土岐典子氏(がん・感染症センター都立駒込病院血液内科部長)による講演「造血幹細胞移植患者さんと歯科の関わり~当院の現状をふまえて~」、池上由美子氏(同病院看護部主任歯科衛生士)による講演「造血・免疫細胞療法における口腔健康管理~移植プロトコールから口腔粘膜障害のリスクを予測し予防に活かすには~」が行われた。その中で池上氏は、ガン治療別の口腔粘膜炎のリスク状況および造血・免疫細胞の移植決定から移植までの血液内科と歯科の連携フローを供覧。そして、移植後多くの患者にみられる合併症GVHDである(移植片対宿主病)への対応も含めた口腔粘膜障害のリスク管理の取り組みやチーム医療連携について、示唆に富む内容を披露した。

 閉会の挨拶では、山内智博氏(日本有病者歯科医療学会代表世話人・学術研修委員会委員)より、「有病者の歯科受診難民をつくるようなことがあってはならない。医科疾患に対して自身がどの程度対応できるのかを検討し、1歩でも2歩でも対応できることを増やしていただきたい」とのメッセージが送られ、盛会のうちに終了した。

関連する特集